第21章 深読み注意
「あの、今日は馬に乗らずに歩きたい気分で…、それにいつも信長様に甘えていると周りにも示しがつかないと言うか…、仕事では一人の針子としてしっかりやっていきたいので、あまり信長様の恋仲と言う立場に甘えたくなくて…」
日々散々甘えているくせに一体どの口が言っているのかと、自分でも呆れてしまうけど…
「分かった」
信長様は理解を示してくれた。
「ありがとうございます」
「では使いより戻ったら一度天主へ来い。先程商人から南蛮の菓子が届けられた。食べに来るが良い」
「え、お菓子!?」
「そうだ。貴様の好きそうな菓子であった。あまり日持ちがせんらしい」
うぅ…なぜ今日に限ってこんなにも次から次へと誘惑が…
でも、食べたいけど食べられないっ!
「えっと…」
「どうした?」
「あの…お気持ちは嬉しいのですが、今は食欲があまりなくて…」
「……?」
信長様は私の額と額を合わせた。
「の、信長様っ?」
「熱はないようだな」
(あ、心配してくれてる?)
「そんなんじゃないです。今日は本当に食欲がなくて……、折角誘って下さったのにごめんなさい」
ダイエットのためだって正直に言えない私を許して下さい。
「貴様が食に興味を示さんなど珍しいな、今朝はあんなにも食べておったのに」
「それは…」
スキニーデニムを履く前でしたから。
「本当に大事ないだろうな?」
信長様は心配そうに私を見ると、私の腰に手をまわして抱き寄せた。
「……っ」
腰に巻きついた信長様の手が私のお腹を撫でる。
「だ、ダメっ!」
お腹のたるみを知られたくない私は咄嗟にその手を振り払ってしまった。
(あ、しまった……!)
「伽耶……?」
「ご、ごめんなさい。ちょっと今お腹がデリケートな状況でして…」
たるみを知ってしまった今、できればあまり触られたくない。
「でりけーと?」
「あ、あの…微妙な状況というか…」
ゴニョゴニョと言葉を濁していると、
「ああ、腹を下しておるのか」
信長様は見事に恥ずかしい方向へと考え違いをした。