第19章 譲れない事もある
「貴様が腕の中で愛らしい声を漏らすだけで俺は十分に満たされておる」
「でも……っん!」
「それに貴様が風邪をひけば抱くこともできん」
「そうですけど…でも…」
本当にこの抱き方で、ずっと満足してくれる?と気になってしまう…
「まぁ、そうだな、これからの季節は今以上に寒くなるのは確かだ。その時は湯船に浸かりながら貴様を抱く事にする。だからあまり気にするな」
サラッと言われたけど…聞き流すには重い発言で…
「……え?湯浴みでってことですか…っ?」
「そうだ。体も温まるし、かいた汗も流して出て来れる。一石二鳥であろう?」
一石二鳥であろうって……これからはお風呂でするぞって堂々と今宣言したって事っ?
いやいや、それは…
「無理っ!」
無理な事はキッパリと言っておかないと流されちゃう。
「は…?」
私が、オッケーと言うとでも思っていたのだろうか?信長様は私の拒否に難色を示した。
「湯殿は…嫌ですっ!」
「却下だ」
「本当に無理ですっ!」
「理由を言え」
「それは…恥ずかしいからに決まってます」
それ以外のどんな理由があるって言うの?
抱かれる時は、頭のネジが緩んでると言うかぶっ飛んじゃってるからなるようになれって感じだけど、正気の、しかも蛍光灯よりは暗くても行燈の灯る明るい湯殿で裸を晒すなんて絶対に無理っ!
「何を今さら…貴様の体で見てない所などない。むしろ、貴様でも見れん所も俺は見ておる」
信長様は涼しい顔でそう言って、私の羞恥心をさらに煽って来る。
「わぁーーーっ!そんな事言わないで下さい」
身も蓋もない言いように慌てて耳を塞いで叫んだ。
「忙しい奴だな。それにどうせ恥ずかしいなどと言っていられるのも最初の内だけだ。貴様が身をもって知っているはずだ」
信長様は不敵に笑うと、止めていた体を再び揺らし始める。