第18章 未来を知る者
「…っ、こんな所で急にしないで下さい」
触れるだけなのも、好き勝手に探って離れていかれるのも、余計に熱を煽られて困る……!
「されたくなければ可愛いことばかりを言うその口を俺に晒すな」
「はぁっ!?」
(普通に喋ってただけなのにっ!)
「貴様の吐く言葉は媚薬の様だな」
「え?」
「それを聞くだけで口づけたくなる」
長い指が伸びて私の顎を持ち上げる。
「 っ、もうダメです!」
これ以上されたら人前とは言え止められなくなりそうで、私は信長様の口を塞いでストップをかけた。
「ふっ、二度も俺の口づけを止めるとは、後で分かっておろうな……?」
阻止した私の手を掴んで離したその口元は愉快に弧を描いていて…本日のお仕置きが決定したのだと悟った。
「あの…信長様……、ご相談がありまして、少しよろしいですか?」
団子を食べ終えたところへ、店の店主が声をかけてきた。
「構わん」
飲んでいたお茶を盆の上に置いて、信長様は立ち上がった。
「伽耶、貴様はここで待て」
「はい」
(凄いな、信長様…)
さっきの村でもみんなからの相談に乗ってたけど、ここでも同じなんだ。
店に入って行く信長様の後ろ姿を見ながら、すごい人を好きになったのだと改めて実感した。
一人になった私の目には、信長様の馬に掛けられた頂き物のお芋が映った。
「あのお芋で何作ろうかな……?」
立派なお芋は、何種類かのスイーツを作れそうなほどの量で…
「焼き芋はまず外せないでしょ?ポテトパイも食べたいけど…パイは生地がないから無理だし…、プリンも…牛乳がないか……、って事は、バターも生クリームもないからスイートポテトもアウトだなぁ…」
自分のレパートリーの低さもあるけど、思いつくものは全て何かが足りない。
「あ、でもスイートポテトは牛乳と卵だけで何とかなるかも……でも、牛乳ってこの時代でも手に入るのかなぁ…うーーん……」
牛肉を食べないのに牛なんかいないよね?
結局できるのは、焼き芋とスイートポテトフライ位かなぁと考えていると、
「牛乳ならば、手に入らない事はない」
そんな言葉が背後から突然聞こえて来た。
「え、本当ですかっ?」
期待感を胸に振り返れば、見知らぬ黒髪の男性が立っていた。