第18章 未来を知る者
「ごゆっくりどうぞ」
店の外にある縁台に腰掛けた私達の前に、温かいお茶と団子が運ばれて来た。
「おいしい〜幸せ〜」
程よく体を動かした後の甘味はたまらなく私を幸せにしてくれる。
「着物や茶碗を見ても困った顔をするくせに、団子一つでその顔とは、貴様は安上がりだな」
甘味で緩みまくっているであろう私の頬に指を滑らせて信長様は笑った。
「ふふっ、そうかもしれません。私は、もちろんお化粧も着物も小物も大好きですし、たくさん贈って頂いてとても嬉しかったですけど、もうそんなにたくさんはいらないんです。何だか、それに慣れて嬉しいとか幸せを感じられなくなる方が怖いです」
信長様はいつだって気持ちでも贈り物でも最大級だから、それが当たり前になって贅沢に思わなくなってしまうことが怖い。
「贅に溺れた者は、更なる贅を求めて高みを目指す。限りなどはない。だが貴様は違うと言いたいのか?」
お茶を飲みながら、信長様は私に問いかける。
「うーーん、私は、たくさんの物に囲まれたいとは思ってないです。必要な時に必要な物があれは幸せです」
「貴様らしい、甘っちょろい考えだな」
「もう、すぐそれを言う。でも、本当なんですよ?毎日ご飯を食べる事ができて、寝るところがあって、着る物に困らない生活ができるなんて、しかもそれを信長様と出来ている事が奇跡みたいだから、私はそれだけでとても幸せで、他には何もいらないんです」
この時代に残ったことを後悔する暇なんてないほどに愛を注がれて日々幸せで、とても満たされてる。
「伽耶」
「はい………っ、ん」
いつもながらの突然の口づけ……、
触れるだけで終わると思っていたら、大きな手が頬に添えられた。
「っなっ!こんなとこ…んぅ……!」
口を開いた瞬間を逃すことなく舌が割り込んできて呼吸を奪って行く。
「ん、…ふっ、…」
勝手に人の口内で暴れると、唇はサッと離れた。