第18章 未来を知る者
「次に行く時に何かを持って行ってやれ。何か約束をしたのであろう…?」
「あ、はい。今度草履編みを教えてもらう約束をしたんです。とても楽しみです!」
「ふっ、化粧や貝合わせよりも草鞋編みが嬉しいか……真におかしな奴だ」
「それもありますけど、こうやって信長様と一緒に出かけられるのがデートみたいで嬉しいんです」
「?…でぇと、とは何だ?」
「えっと、デートって言うのは、好きな人と二人でお出かけする事です」
「それは…逢瀬の事を言っておるのか?」
「あ、そうです。それです!信長様と逢瀬に出かけたみたいで、今日はとても楽しかったです。だからまた一緒に行きたいなって思って…」
草履編みももちろん楽しみだけど、今日は体験型のデートに来たみたいで本当に楽しかった。
「伽耶、後ろを向け」
「はい?」
馬の上で信長様の前に座る私は、落ちない様にゆっくりと顔を後ろに向けた。
「ん……っ!」
待ち構えていた信長様の顔が私の顔を覗きこみ、掠めるだけのキスをした。
「……っ、………!」
(ここ…城下町…!)
「ふっ、可愛いことを言えばこうなるのは当たり前だ」
「き、気をつけます」
本当に気をつけよう…
急にされて困ったのもあるけど、一瞬で去っていった唇は、確実に私に熱を灯してから去って行ったから…はしたないけど、物足りなさを感じてしまった。
「どうした?あれでは物足りなかったか?」
私の心を読み取ったかの様に、信長様がもう一度私の顔を後ろから覗き込んだ。
「っ、そんな事は……」
ありませんと答える前に、
ぐぅーーーーと、私のお腹がなった。
「!」
(このタイミングは恥ずかしすぎるっ!)
「くっ、物足りぬのは腹の方か。俺との口づけより空腹を訴えるとは、相変わらず読めん女だ」
「し、失礼しました……」
クックックッと、笑う信長様の体の揺れが私にも伝わり、恥ずかしさで余計に顔が熱くなった。
「少し、寄り道して行くか」
思わぬデート延長が決定。
お腹が豪快になったのは恥ずかしかったけど、その代わりに信長様と茶屋へと寄り道をして行く事になった。