第18章 未来を知る者
「あの、今日は本当に欲しい物は何も…」
お腹が空いているからこそご飯が美味しいのであって、食事をした後にデパ地下を覗いてもあまり美味しそうに感じない様に、物で溢れてしまった今、綺麗で素敵な物を目の前にしても、心はわくわくしない。
「だが、此奴らをただ返すわけにはいかん。商売も回さねば国は栄えん」
「そうですけど…」
そう言われると、せっかくお呼びした商人の方たちに申し訳ない気もする…
(何か…お手頃そうな物ないかな…)
ずらりと並べられた豪華装飾品の横に、茶器が並べられているのが見えた。
(あ、あの茶碗きれい…)
お昼の休憩時に、何度か信長様に声をかけられお茶を点ててもらった事があり、マイ茶碗が欲しいなぁなんて思ってたからちょうど良いかも…(茶道の作法はまだイマイチだけど…)
「あ、じゃあ、この茶碗にします」
手に取ったのは、
信長様がいつも使われている、星空のように深い青の茶碗に似ていて、南国の海を思わせるような濃淡の碧のグラデーションが鮮やかなお抹茶茶碗。
「ほぅ…」
信長様がそう声を漏らすと、
「これはこれは…」
商人の人も感心するような声を漏らした。
もうその反応が怖いっ……!
「あの…ダメでした?」
(もっと、着物とかそういう大物を選ばないとダメだったかな…?)
「いや、それで良い」
信長様はそう言って笑ってくれたから、ホッとして手に取った茶碗を膝の上に置いた。
「流石、信長様の選ばれたお方だけある。お目が高い……!」
「え?」
(急になに……っ?)
「この茶碗を選ばれるとはまいりました」
「え?」
(なにがまいったの……?)
「何だ貴様…まさかこれが何かを知らずに選んだのか?」
え、しか言わない私に信長様が問いかけた。
「はい。…あの、信長様とお茶を楽しむのに良いかなと思って…」
まさか私…なんか凄いの選んじゃった?