第16章 夜の誘い方
〜そして次の日の夜〜
私はドキドキしながら信長様が来るのを待っていた。
「うーー、これはこれで緊張する」
自分の家(部屋)に彼を初めて迎える様な気持ちで、部屋の中に汚れや埃はないかとさっきから落ち着かない。三ヶ月以上ここに住んでいて信長様が来るのは実は初めてのこと。
お部屋にはこれと言った荷物もないし、針箱も片して棚に置いた。
「あーー、でもコレが落ち着かない」
コレとは、既に敷かれたお布団の事。
信長様の過ごす天主の部屋はいくつかあるため、晩酌をして、寝所に連れられて行くか、廻縁に近い部屋の絨毯に押し倒されるかとか色々だけど、私の部屋はこの一室だけで、寝るのも何かをするのもここで…
久しぶりに敷いたお布団が嫌でも目に入って来て、さぁどうぞ!と言わんばかりに存在感を主張して来る。
「いやいや、考えすぎだから、私…」
一人暮らしの部屋だって、ベッドはいつでもそこにあって、ソファに座らずにベットに座るなんて普通だった。
でも待てよ?
同じ状況でも、違う事が一つある。
これから来る彼氏を迎えるのに、ルームウェアというか、パジャマだった事はまずない。
湯浴みを済ませたし、もう夜だから寝間着姿でいたけど、これが余計にやる気に満ちてる感が出てるのかも…!
「そうだ、ちゃんと着物を着て出迎えよう!」
何だか、人にあまり見られたくないと言う最初の論点からズレて来た感はあるけど、未来にいた時の様に信長様を出迎えたくなった私は、着物に着替える事にした。
この時代の寝間着はどうやら人それぞれらしく、小袖の人もいれば長襦袢で寝る人もいる。そして朝起きればその上に着物を重ねて着るのが主流だけど、私は信長様に乱される事がわかっているから、寝間着は寝間着として着て、日中の襦袢とは分けていた。
早く着替えないと、来てしまうかもしれない。
そうでなくてもこの時代には下着が存在してないから着物の下は何もつけていない状態。
立ち上がり急いで着物に着替えようと寝間着を脱いで下に落とした。
パサっと、着物が畳に落ちる音と共に、襖がスーーっと開いた。
(…………えっ?)
「…ほぅ、悪くない出迎えだな」
「!!!!!!!!!!」
(のっ、信長様っ!?)