第16章 夜の誘い方
「……っは、……はぁ、はぁ…」
「口づけ一つでそんな蕩けた顔を俺に晒すくせに、何もせぬ夜があると思っているのか?」
「えっ?」
「愛しい者を愛でるのは当たり前のこと。なのに何もせずにいられると思うとは、まだまだ仕込みが足りぬと見える」
(……あ、拗ねた顔の理由はこれ?何もしないって言ったから…?)
世間から魔王と恐れられる人は、実は些細な事で子どものように拗ねる可愛らしい人で、そんなギャップもたまらなく私をキュンとさせている。
確かに、付き合いだしてから今日まで、信長様は毎夜私を愛してくれている。
けど…
「あの…もうすぐ月のモノが来るので…さすがにその時は、夜は別々で過ごしますよね…?」
付き合ってからはまだ来てなかったけど、予定ではそろそろ来る。それに来てくれなければヒヤヒヤするから来てもらわなければ困るし…
それに抱くために呼んでるって、さっき気持ちいい位にはっきりと言い切ってたから、生理の時は会わないって事だよね…?
「どんな夜でも俺が城にいる時は共にいろ。添い寝だけでも貴様は十分に俺の抱き枕として効果を発揮する」
「抱き枕って…」
言い方に問題はあれど、どんな時でも一緒に過ごしたいと思ってもらえるのは嬉しい。
「あ、じゃあ信長様が私の部屋に来て下さるのはどうですか?」
「は?」
「だって私は信長様と違って夕方以降は大体部屋にいますし、いなくてもすぐ戻って来ますから」
部屋を開ける理由なんて、湯浴みか厠位だし…
「ふっ、この俺に、待てと言っておるのか?」
信長様はそう言って笑うと、私の体をそっと絨毯へ倒した。
「あ、いえ、違いますっ!そう言う偉そうな意味じゃなくて…」
「冗談だ。貴様がそうしたいのであれば俺は構わんが…、貴様の部屋だと、余計に貴様は困ると思うが…」
楽しそうに私の寝巻きの紐を解きながら言う信長様の言葉の意味が、その時の私には分からず…
「私が…どうして困るんですか?」
誰にも見られないし、信長様次第だから楽になると思うけど…
「分からんならそれでいい。話は終了だ。明日からは俺が貴様の部屋へ行く。それで良いな?」
「はい。……んっ、」
熱い吐息が首にかかり、緩められた寝間着が大きな手に乱されて行く。
悩みが一つ解決したと思った私は、安心してその身を信長様に委ねた。