第16章 夜の誘い方
「一体何が問題だ?」
「えっ?」
私の悩みはどうやら通じなかったらしい。
「俺が貴様を愛する事が女中どもに知られる事の何が問題だと言うのだ?」
それどころか、若干逆キレ気味…?
「っ、全部が問題です」
だって、ホテルに入って行くところを毎回見られているみたいで…って、言っても通じないことは分かってるけど…
「何だか…それが目的で信長様のお部屋に行くみたいでイヤなんです」
「それが目的であろう…?他に何かあるのか?」
「うっ、それは…」
気持ち良いほどスパッと言い切られると言葉に詰まってしまうけど…、好きだと言われてなかったら体だけが目的に聞こえてしまうじゃないかぁ〜!
日々大勢の家臣に囲まれる事が普通な信長様には分からないかもしれないけど、超ド庶民の、しかも大地にフラれてからは”おひとりさま”として生きて来た私には、まだ”様”付けされるのだって抵抗がある(仲の良い人達にはなるべく呼び捨てにしてもらってるけど)
「今まではそうでも、今後はただ二人の会話を楽しんで何もしない日だってあるのに、みんなからは…その…」
あの人達毎晩すごいわねって、言われていないかって…、自意識過剰だって分かってはいても、これもカエルの性で…
「このままだと逃げ出してしまいそうなので、お願いします。あまり人に知られない方法を考えてもらえませんか?」
パンっと手を合わせてお願いをした。
(………ん?返事がない…?)
閉じていた目をうっすらと開けて合わせた両手の横からそっと信長様を見ると、
(えっ、不機嫌っ!?)
逃げ出していまいそうと言ったからなのか、拗ねた顔で私を見ていた信長様は、お酒をグイッと煽った。
信長様は、無言になった時が一番凄みが効いている。どんな地雷を踏んでしまったんだろうと、信長様の動きを凝視する。
空になった盃をトンッと膳に置くと、腕を掴まれ抱き寄せられた。