第16章 夜の誘い方
戦国時代に残ると決めて、信長様と恋仲となった私の日々はとても幸せで充実していたけれど、この時代ならではの風習にやはり戸惑うことも多い。
特に…
「伽耶様、信長様がお呼びです」
「は、はい」
夕餉を食べ湯浴みを済ませ髪が乾く頃になると、女中さんが私を呼びに来る。それは信長様からの夜のお誘いで、これが異常ーーーっに恥ずかしい。だってこれから抱かれに行きますと女中さんにバレバレで、「これからこの二人やるんだわ」とか思われてるんじゃないかと、ここ最近の悩みだ。
それでも会いたい気持ちには勝てず、自意識に悩まされながら、今夜もまた天主へと行く。
「それでは、私はここで」
「ありがとうございます」
女中さんは頭を下げて戻って行った。
いっそのこと、連れて来てくれなくても大丈夫です。と言いたいけど、何をどこまで言っていいものなのかが分からないし、これも彼女たちの仕事なのだとすれば、それに口を出すのもいかがな物かと思ってしまい、それも悩みどころの一つとなっていた。
「信長様、伽耶です。失礼します」
気を取り直して襖を開ければ、信長様も夜着に着替えてゆったりと縁側に腰を下ろしている。
普段ももちろん素敵だけど、夜に見る信長様は男らしさとか色気とかがダダ漏れで、もうこの姿を見ただけでドキドキしてしまう。
(うーー、邪心よあっちへ行ってー)
いつも愛されている時の様々なことが脳裏を駆け巡り、心は穏やかではいられない。
「貴様も飲むか?」
「はい、ありがとうございます」
自分の邪心と戦っているとも知らず、信長様は私にお酒を勧めて来る。
本当に優しくてかっこいい、私の自慢の彼氏だ。
でも、あの毎夜の呼び出しをなんとかしたい。
「あの、信長様…」
私は、信長様に思っていることを正直に伝えた。