第15章 晩酌④
俺のその行動に伽耶の顔は途端に曇る。
俺が…喜ぶとでも思ったか…?
「京からお戻りになられたばかりでお疲れですよね?」
俺の態度は疲れからだと伽耶は思いたいのだろう。
「いや、さほど疲れてはおらん」
「そうですか…?」
「ああ…」
俺の煮え切らぬ態度に伽耶の顔は益々曇って行き、俺の心は苛立ちを増して行く。
「何か…怒ってますか?」
そして伽耶は、漸くオレの気持ちに触れてきた。
「なぜそう思う?」
「なぜか分からないから聞いてるんです。最後の晩酌を楽しみたいのに、これじゃ……あっ!」
伽耶のこの言葉が俺の怒りに火をつけ、結果俺は、奴の華奢な体を押し倒した。
「鈍い女だ。それとも、わざとやっておるのか?」
最後の晩酌を楽しむ?
惚れた女が離れようとしている夜を楽しめるとでも思ったか!
「違っ…んぅ!」
言い訳はさせまいと、奴の頭を掴んで口を塞いだ。
「のぶっ、んっ、…ん」
焦りと強い苛立ちで、伽耶の唇の柔らかさを感じられぬ程に塞いで呼吸を奪った。
「っ、ん…」
だがこんな時でも奴から漏れる吐息は甘く、その先の甘さを知りたいと体に熱が灯り始めた。
「伽耶」
「っ、は、…はぁ、はぁ、……ん!」
唇を離し奴の首筋に吸い付いた。
抱こうと思っていたわけではない。だが、俺同様に奴の体の熱も灯っていくのが分かり、それを確かめる様に奴の着物に手を強引に入れ顕になった鎖骨に歯を立てた。
「…っ、んんっ」
くぐもった声に、理性はどんどん剥がされていく。
「信長様…っあ、んん!」
手荒いことをしている割に、伽耶は抵抗をするどころか、
「ん、……はっ、…んっ」
甘い声をあげて身を捩る。
「…っ、信長様」
そしてついには、俺の首に奴の両腕を巻き付けて来た。
「…伽耶?」
……頭が急激に冷えた。