第14章 かくれんぼ
「っ……う、ぅぅーー」
感動して泣かずにはいられない。
「貴様はすぐ泣くな」
泣き出した私を見て笑いながら、頬に手を当て流れる涙を信長様は拭ってくれる。
「うーー、私だって、自分がこんなにも泣き虫なんて知りませんでした。でもこんな…泣かないなんて無理です。うぅ…」
怖かった懐剣が一瞬で宝物へと変わってしまった。
こんな魔法、信長様しか使えない。
「…でも、信長様は私が未来へ帰らず戻って来ると確信してたって…言ってませんでした?」
それなのに、これを彫ってくれたの?
「確信はあった。…が、貴様は時に俺の考えを超えることをする。念には念を…だ」
念には念をって…
「本当に、私が帰った後も私だけを思ってくれるつもりだったんですか?」
あんな、自分勝手に帰ろうとした私を…?
「当たり前だ。まぁ他の女は抱いたと思うがな。俺とて欲は溜まる」
ククッと意味深な笑いを浮かべた信長様は、私の背中に手を回して絨毯へと再び押し倒した。
「っ、…じゃあ今は…?その…欲があれば今後も他の人をって思ってますか……?」
押し倒され組み敷かれている事よりも、その言葉の続きが気になった。
大地と付き合った時も、彼の女癖の悪さに気付くのに時間はかからなかったけど、信長様もそうなんだろうか?
「ふっ、そんな顔をするな。その様な事は絶対に起きぬ」
「どうしてそう言い切れるんですか…?」
だって、遊女と一緒にいる信長様を見たこともある。(付き合う前だったけど…)
「貴様を抱いたからだ」
「えっ?」
予想だにしない言葉に、胸が大きく弾んだ。
「女を抱いて、こんなにも満たされたのは初めてだ」
(っ…それは一体誰とお比べになっているのでしょうか?)
喜んだ途端の突き落とし…?飴と鞭が半端ない。
私だって信長様が初めてじゃないけど…よく大地と比較してしまうけど、実際に自分が他の人と比べられるのはとても複雑だ…