第14章 かくれんぼ
「……っ」
「伽耶、貴様に会うまでは正室も側室も政治的価値のある女が現れたのならば別に置いても良いと思っていたのは確かだ」
「は..い」
「だが今は違う。俺には貴様がいる。それに、正室や側室や恋仲などと言う呼び方など、俺にはどうでもいい」
「私は…気にします」
「ふっ、ならば、貴様の好きな呼び名の関係でいい。貴様はどれがいいのだ?」
「そんな…私の気分で決めていいんですか?」
天下を取ろうと言う人との関係を?
「俺がいいと言っている。早く決めよ」
「じゃあ、恋仲です。二人きりの時間を今はまだ楽しみたいです」
「ではそれで良い」
「え?」
(これで決定でいいの?)
今日一日中悩んで逃げてまで悩んだ一つ目の問題は、いとも簡単に解決してしまった。
「でも、あの…世継ぎの事は?」
「ふっ、前向きだな」
信長様は楽しそうに目を細め、私の唇を掠め取った。
「そ、そう言うつもりで言ったんじゃ…」
「冗談だ、分かっておる。それに俺は、貴様が望まぬのであれば子はいらん。今後はその様に貴様を抱くまでだ」
「っ…」
だから、そんな簡単にポンポン決めても良いの?
「でも、織田家の為には必要なんですよね?」
私が欲しくないから作らないじゃ、織田家の為にならないんじゃ…
「伽耶、あまり周りの事に振り回されるな。周りがではない。貴様がどうしたいかだ」
「でも…、私まだ心の準備と言うか、全然覚悟とかなくって…本当に、信長様を好きだと言う気持ちだけでここにいて、何もかも中途半端で…」
「だから煽るなと言うに…」
信長様は困った顔で笑うと私の花を軽くつまんだ。
「え??」
「物事に手順などは存在しない。誰かがそれをし、それが効率よく回るから後に続く者がそれに倣い手順やしきたりに変わっただけの事。だから貴様は貴様の在り方を作れば良い。俺には貴様が俺を好きだと言う気持ちがあればそれで十分だ」
「信長様…」
「そもそも俺たちは時空を超えて出会い気持ちを通わせ合った唯一無二の存在
。決まりごとなどは存在せぬ。俺たちのやり方をこれから見つければいい」
「…っ、はい」
私たちは私たちの付き合い方を見つけていく。私たちは何もかもが違うのだから、そんな事は分かって付き合ったのだから、焦る必要はないんだ……