第14章 かくれんぼ
「……っ」
そんな仕草にキュンとしながらも私は言葉を続けた。
「私は、信長様の事が好きで、その…一緒にいられる今がとても幸せで、先の事を言われても全然ピンと来ないと言うか…分からないんです」
「それで…?」
話を続けよと、目が促してくる。
「今日一日で、たくさんの方から祝福の言葉と、あと、織田家の為にって言葉を頂きました」
「もっと、詳しく話せ。濁す必要はない」
「…っ、はい。あの、それで…私は信長様の側室になったから、頑張って正室になってほしいって言われて混乱して…しかも織田家にはお世継ぎがいないから健やかな子をって…あとは、御家の事を私に出来るのかどうかも…あの、頑張りますけど、不安です」
信長様に言われた通り、濁さずに話しているけど、これで良いのかな?
「それで?」
「え?」
「後は何か言われてないのか?」
「後は…ないと思います。本当はもっとあったのかもしれませんがもういっぱいいっぱいで逃げてしまったので…」
「そうか…」
信長様は私の髪をくるくると指に巻きつけては解き、また巻き付ける。
「私は世間的に見て、信長様の恋仲ではなく側室になるんですか?」
私の問いかけに、信長様は指の動きを止めた。
「世間から見れば、部屋を与えられた女は側室や側女と思われる。だが、貴様は側室などではない」
「でも、正室でもないですよね?」
「そうだな。それも違う」
「でもその内信長様は、正室と側室と両方を持たれるって聞きました。それは本当ですか?」
(私はそれには耐えられそうもありませんっ!)て言葉は寸前で飲み込んだ。
「側室は生涯持たぬが、正室はその内持つやもしれん」
「その内って…」
いつかはあるって言…?
思いがけない言葉の打撃を食らい信長様から目を逸らすと、すぐに長い指にそれを阻止された。
「勝手な想像を膨らますな。貴様が俺の正室にと望むのであれば俺も正室を持つことになる…ということだ」
ちゃんと最後まで聞けと、その上げられた口角がニヤリと伝えて来る。