第14章 かくれんぼ
部屋に入ると信長様は絨毯の上に座り、私をそのまま膝の上に乗せた。
自分で座るから降ります。って言わなければと思ったけど甘えたい気持ちが勝り、私はそのまま大人しく体温を感じられる距離を受け入れた。
「色々と言いたそうだな」
信長様の顔は、私が何を言い出すのかを期待している。
「言いたい事と言うか、聞きたい事はたくさんあります」
「全て聞いてやる。話せ」
「でも…」
たくさんあるけど…どれも言葉選びが慎重になる様な内容で…私は信長様を見つめ返したまま黙ってしまう。
「どうした?逃げ出すなどと大胆なことをしでかした割には言葉は重いようだな」
信長様は更に楽しそうに口角を上げ、早くしろと急かす様に私の下唇をぷにっと親指の腹で押した。
「あの…私って、信長様の側室なんですか?」
ごまかしの通じない信長様にはストレートに言った方がいいと覚悟を決めた私は、思い切って思いのままの言葉を口にした。
「は?」
案の定、信長様は内容を聞き返す。
「私…この時代の男女の付き合い方を良く知らなくて…、あの、私の時代だと、前に話したと思いますが、彼氏彼女と言って………あっ!」
そう言えば、この話をした時、信長様は”恋仲”って言葉を使ってなかったっけ?なーんだ、恋人同士って関係あるじゃん!
「恋仲っ!恋仲ですよね?」
「俺と貴様の関係の事か?」
(話がコロコロ変わるのによく理解してくれたな)
理解力の高さに感心してしまう。
「はいっ!私と信長様って、恋仲になったんですよね?」
「ふっ、何を言い出すのかと思えば…」
信長様はプッと吹き出した。
「要は貴様は、俺との関係性に迷って逃げたという事か?」
「……えっと、それだけじゃありません」
「全て話せ。遠慮することはない」
信長様は私の髪を一房手に取った。
「私…信長様の事が好きなんです」
「それは先程も聞いた。何だ?人が貴様の話を先に聞いてやろうとしておるのに、今すぐ押し倒されたいと見える」
ククッと笑うと、手に取った髪に口づけを落とした。