第14章 かくれんぼ
気がつけば、私を探す女中さん達の声がしなくなった。
(どうしよう…)
探されなくなったという事は、もう放っておかれるって事だろうか?
見つかりたくなくて隠れているのに、急に子供の頃、置いてけぼりにされたかくれんぼを思い出し心細くなって来た。
「何やってんだろう。私…」
心を決めて戻って来た次の日にもう逃げ出すなんて、有言実行できないにも程がある。
でも、すごい人と付き合う事になったのだと時間が経つほどに実感していて、かと言ってこんなに好きになってしまった今、離れることなんて到底出来ないわけで…
「出るタイミング、分からないや」
髪もちゃんと拭かなかったから、滴り落ちた水が襦袢に染み込んで体温を少しづつ奪い始めてる。
「信長様…怒ってるよね…」
寒さに気付きブルっと身震いした時、
ガタッ、ガタタッ、と、武器庫の重い扉が開いた。
(っ…誰っ?)
甲冑の後ろに身を潜めて扉を見ると、
(……あ!)
月明かりが差し込む入口には信長様が立っていた。
「のっ、信長様っ、どうしてここが っ!?」
「それは俺のセリフだ。ここで何をしておる?」
「それは…」
「隠れるならもっと上手く隠れろ。童でもこれよりは上手く隠れる」
「え?」
「入り口のところに水が落ちておった。髪を乾かしもせず逃げたのだろう?」
口調も表情も態度も、全てが呆れていると語っている。
「……っ、だって」
「話は部屋で聞いてやる。来い」
「あっ…!」
信長様はヒョイっと私を抱き上げる。
「やはりな、体が冷えておる。しかと髪を乾かさぬからこうなる」
「ごめんなさい」
「俺に抱きついていろ、少しは温まるだろう」
「……はい」
ギュッと信長様の首に抱きつけば、冷えた体が心ごと温められていく。
全然敵わない。この人の前だと、自分がとても幼く感じてしまう。些細なことで怖くなって嫌になって逃げ出して…それでもこうやって迎えに来て温めてくれる。
「信長様が好きです」
自然と気持ちが溢れた。
「何だ、逃げておきながら誘っておるのか?」
「ち、違います。気持ちだけはちゃんと伝えようと思って…、探しに来てくださりありがとうございました」
「ふっ、やはり貴様の考えは中々読めん」
信長様はそう言って笑いながら、私を部屋に連れ帰った。