第14章 かくれんぼ
「ささっ、どうぞ私達にお任せください」
「えっ、まっ、待って…ひゃぁっ!」
手拭いはあっという間に取られ、あれよあれよと二人のペースに乗せられた。
「まぁ、伽耶様の肌…お綺麗ですわ」
「…っ、ありがとうございます。って言うか自分で出来ますのでもうここで…」
これは、永久脱毛に行く時よりも恥ずかしい。
でも二人は止める事なく香油を手に取り私の身体に塗って行く。
「あ、あの、どうしていきなりこんな…」
昨日までは普通に入れてたのに…
「それはもちろん、伽耶様に一日も早く健やかなお子を授かってもらう為です」
「えっ……?」
「織田家にはまだ御世継ぎがいらっしゃいません。ですから伽耶様には是非とも信長様のお子を授かって頂きたいと。そのためにも今後は私たちに夜伽のお支度の手伝いをさせて頂きたく…」
夜伽?
お世継ぎ?
健やかなお子っ!?
「そ、それはちょっと気が早いんじゃ…」
結婚すっ飛ばして妊娠っ!?(いやおめでた婚ってのもあるけど、何だかこれはそれとニュアンスが違う気がする…)
「あらそんなことはありませんわ。信長様ほどの殿方ですもの、ゆっくりしてると正室や他の側室に持ってかれてしまいますわ」
「えっ、信長様にはもう正室も側室もいるのっ!?」
(この三ヶ月全然会わなかったけど…!?)
「ご安心ください。伽耶様以外にそのような方はおられません。信長様が見染めたのは伽耶様が初めてでございます」
「そうなの…?」
それはちょっと…かなり嬉しい。
こんな状況でも、信長様の心を知ればやはり顔は緩んでしまう。
「そうですわ。ですから信長様のご寵愛を今後も伽耶様お一人のものにし続けるためにも、私たちがお手伝い致しますので、お気張り下さいませ!」
「お気張り下さいって…」
頑張れって事?
子作りを?
…ああ、ダメだ。頭が混乱して来た。
明らかにキャパオーバーだ。
「あの…少し湯あたりしたみたいなので、少し外の空気を吸って来てもいいですか?」
「まぁ、大変!今すぐお水を…」
「いえ、そこまでは大丈夫ですから…」
「そうですか?」
女中さん達の納得いかない顔を後目に、私は脱衣所から外に出て…、
「ごめんっ、無理っ!」
その場から逃げ出した。