第14章 かくれんぼ
だがしかし!
事態はそれだけでは終わらなかった。
私たちがついに結ばれたであろう事はすぐに城内に広まり、「またお願いします」と挨拶に行った先々で信長様との仲を根掘り葉掘り聞かれた。
その中で何人かに言われた、
「伽耶様が側室から正室になる日を待ち望んでおります」
という言葉…
側室から正室になれるのか?と言う疑問の前に、
私って、信長様の側室なの?
と、新たな疑問が浮かび上がる。
だって側室って、一夫多妻が許されたこの時代のいわゆる奥さんじゃないの?どういう事?
そりゃ、ここに残って一生を信長様とって思ったから戻って来た訳だけど…、側室とか、織田家の事とか、そんな事全然考えてなかった。
『貴様には俺の全てを見て覚悟を決める必要がある。俺の側にいるとはどう言うことなのか、それをよく見てよく理解をしろ』
以前、私を戦に連れていくと決めた信長様はこんな事を言っていた。でもそれは戦を見てこの時代の状況を理解しろという事だと思っていた。
この時代は確かに私のいた時代とは大きく違う。
でも、付き合うとは結婚すると言う事なんだろうか?
じゃあ、お祭りの時に見た恋仲の人々は皆夫婦か許嫁って事?
好きだから、相手も好きだと言ってくれたから付き合う。そんな単純なことが…この時代では難しいのだろうか…?
夢のような一夜から一転、二人の関係性に私は大いに頭を悩ませた。
けれどその悩みが一人で解決するはずもなく時間も過ぎていき、夕餉を済ませ(悩んでてもお腹は空く)湯浴みの時間となった。
お風呂に入って体はスッキリはしたけど、心はモヤがかかったまま…
「はぁ〜」
脱衣所で濡れた体を拭いていると…
「伽耶様、失礼致します」
「えっ?」
返事を返す前に脱衣所の扉がガラガラと開いて行く。
「ちょっ、ちょっと待って今裸…っ!」
ガラガランッ!
っ、全然聞いてないっ!?
手拭いを広げて隠す間もなく女中さん二人が普通に入って来た。
「あ、あの…」
(入ってはダメな時間だった?)
混乱していると二人は私の前で膝をつき頭を下げた。
「本日より伽耶様の湯浴み後の手伝いをさせて頂きます」
「え?」
「宜しくお願いします。伽耶様」
「ど、どう言う事っ!?」
(何も聞いてないよっ!)