第13章 中秋の名月
(そんなの、抱かれてもいいに決まってる)
「でも…なぜ戻って来た?とか普通は聞きませんか?」
今すぐ抱かれてもいい。でも抱かれるのなら、ちゃんと告白をして思いを通わせあってから抱かれたい。
お願いしますっと言う目で訴えると、信長様はやれやれと言った感じに小さくため息を吐き口を開いた。
「ならば聞くが、何故戻って来た?」
「それは、あの…」
素直に生きてこなかった私に告白と言うものはとてもハードルが高いものだったらしく、恥ずかしさが頂点に達して途端に言葉が出なくなった。
「あの、私…信長様のことが…」
(あと一言だ、頑張れ私っ!)
自分で自分を応援していると、
「月が綺麗だな」
突然信長様が話し始めた。
「……え?」
過ごしやすいこの時期は寝所の襖も開け放ってあり空は見える。けど、そう言われて外に目を向けても残念ながら今夜は薄い雲が広がっていて中秋の名月は見ることができない。
「月…見えませんよ?」
「月などには言っておらん、俺は貴様に言っている」
「え?…って、もしかして…」
(意味を分かって言ってる?)
戸惑う私に信長様はもう一度囁く。
「月が…綺麗だな伽耶」
そして頬に信長様のキスが落ちた。
「……っ、何で?」
「佐助に聞いた」
「佐助君に?いつ……あ!」
(今朝二人で話していたあの時!?)
「この言葉が貴様の俺への気持ちだと知り、貴様は必ず戻って来ると確信した」
そしてその通りになったと言わんばかりに信長様はニヤリと口角を上げた。
「……っ、」
信長様に間接的であれ愛していると伝えていた事を知られていたと言う事実に頬がカァッと熱くなった。
「その色だ」
「え?」
「俺の事を考えただけで貴様の頬が艶やかな桃色に染まる日を待ち望んでいた」
「?」
(どう言う意味だろう?)
いつだって信長様に触れられれば私の顔は熱くなったと思うけど…
「ふっ、分からんでいい。ただ貴様の心も既に俺のものだったと言う事がこの上なく嬉しいと思っただけだ」
息が止まりそうなほど嬉しそうに笑うから、感動して涙がまた出た。
「ふっ………うぅ…」