第13章 中秋の名月
「泣き虫め。だがそこもまた良い」
目頭にもキスが落ちた。
「…っ、信長様が好きです。たくさん迷ったし、逃げたし、また逃げたくなる日が来るかもしれないけど、それでも信長様といたい。こんな私でもずっと愛してくれますか?」
そして私もあなたを愛して生きて行きたい。
「やっと言ったな」
大好きなオレ様な笑顔を見せると唇が重なった。
「ん…」
「俺の気持ちは変わらんと言ったはずだ。もう逃さぬからそのつもりでいろ」
再び唇を重ねると今度は深く探られた。
帯を解く音が口づけの音と混ざり合う。
「ん、……ふっ、…ん、」
口づけに夢中になっている間に着物は暴かれ、信長様の前に素肌が晒された。
「……っ、」
信長様は一つ一つの場所を確認するように触れてキスを落としていく。
「ん、…っ、……ぁっ、」
指が、私の熱をさらに煽る。
「あっ、やっぁ、…」
与えられる快楽に耐えられず広い背中にしがみつけば、その手を絡め取られ褥に沈められた。
「伽耶」
熱に浮かされた信長様の瞳が私を捕らえる。
「もっと時間をかけて可愛がってやりたかったが俺も限界だ」
“もう貴様の中に入りたい”と耳元で艶やかに囁かれ、コクコクとただ頷いて信長様の熱を受け入れた。
「っ、……ぁ、…ぁっ、はっ」
一つになり揺れ動く体で外に視線を向ければ、雲はいつの間にか晴れ満月が顔を覗かせていた。
「はぁ、あ、信長様、月が…ん、満月が見えます」
「はっ?」
「月が綺麗ですね」
絶対に一緒に見られないと思っていた中秋の名月をあなたと見る事ができた。
「っ、貴様…俺に抱かれてる最中に月見とは良い度胸だ」
信長様は少し拗ねた顔をして私の腰を持ち上げる。
「え?…ひやぁっん!」
「ふっ、良い声だな」
「もう、意地悪しないでください。本当に、月が綺麗なんですっ!」
それをあなたと見る事ができてとても幸せなんです。
「こんなもの、これから何度でも共に見れる」
「っ、そうですけど…ぁぁっん!」
「俺に集中しろ、よそ見は許さん」
「……っんぅ…」
その後は、文字通りよそ見なんてできる暇なく信長様に愛された。
愛されるとは、好きな人に抱かれるとはこんなにも幸せな事なんだと、私は生まれて初めて心の底から感じる甘い気持ちに身を委ね続けた。