第13章 中秋の名月
もしかして…嫌われた?
感動の再会を喜び合うこともなく討伐に出発した信長様を天主の上から見送った後、私はすごすごと自分の部屋へ戻って来た。
まだ部屋があったことに安堵したけど、あの信長様の態度の素っ気なさにかなり面くらっていた。
でも当たり前だ。
今まで散々帰るって、好きにならないって言ってきたんだもの。それなのに戻って来たら歓迎されると思ってるなんて、都合がいいにも程がある。
でも…へこむ。
モヤモヤした感情を抱えたまま部屋ですごしているとあっという間に夜になり、信長様が戻って来たと女中さんが呼びに来てくれた。
けど、さっきほどの勢いはもう私にはない。
もしかしたら、信長様の中では私は終わったことになってるのかも。
思い出にしてくれたのかは分からないけど、過去の女が、しかも蛙憑の女が戻って来て迷惑だって思ってる…?
感動の再会を勝手に想像していた私は重い足取りで天主に到着する。
いつもならすぐに声をかけるのに、今夜は躊躇ってしまう。
怖い。
もし、なぜ帰らなかった?とか何故まだここにいるとか、貴様とはもう何の関係も無いとか言われたらどうしよう…?
もう迷わないと決めたのに、信長様の素っ気ない態度が尾を引いていて中々襖の前から動けない。
こうなると悪い癖が顔をのぞかせる。
帰ろうかな?(逃げようかな)
そう思った時、
スパンっ!と襖が勢いよく開いた。
(え?)
信長様の方が出てきたと思ったのも束の間…
「のぶっ……っん!」
伸びて来た手に腕を掴まれ口づけられると、そのまま壁際に押さえこまれた。
「ん、………」
獣に食べられているみたいに、噛み付くようなキスが続く。
「っ、ん、……ん、んん、」
一体自分に何が起きているのかを考えたいのに、信長様が角度を変えるたびに深く強くなっていくキスに、翻弄されて思考が奪われていく。
「…ん、んっ……ふぁっ、」
(力が…)
もう立っていられそうにないのに、口づけは止むことなく激しく深く探られていく。
「はっ、……ん、、待って…んん、力が…」
崩れ落ちないように信長様の着物を必死で掴んでいだけど、足にはまるで力が入らなくなり、ガクンとその場で崩れた。
「っ、伽耶っ」
信長様は驚いた声を上げ崩れ落ちた私を抱き上げた。