第3章 賭けの始まり
「失礼します」
社長室に呼び出されるみたいな感覚…
お部屋も豪華絢爛って言葉が似合う。天井から全てが美術館のような様相でいかにも権力者の部屋って感じだ。
「何をしてる、早くこっちに来い」
「あ、はい」
信長様はベランダに出てお酒を飲んでるみたい。
少し離れたところに座って私はバッグを出して見せた。
「あの、これ…お持ちしました」
「ああ、中を広げて見せろ」
「……はい」
(この時代では当たり前なんだろうけど、この命令口調には慣れないな…)
引っかかりを覚えながらも私は中身を出して信長様の前に並べた。
「右から順に説明しろ」
「えっと…確か広間でも説明しましたが…」
(もう一回するの?)
「貴様の意見など聞いておらん、言われた通りにしろ」
「……っ!」
カチンときたけど目が怖くて逆らえない。
「……これはスマートホンと言って、離れた相手と話すことの出来る機械です」
「見せてみよ」
画面を開いて信長様に手渡す。
「ほぅ、表面が明るく光っておるが…どのようにして光らせておる?」
「え?それは…LEDディスプレイで…」
「分かるように説明しろ」
「えっと…」
LEDって、そもそも何だ?明るくするやつ?ん?
「何だ、分からんのか?」
「………ぅ、分かりません。ただ、何かを発光させて明るくしてる?って感じだったような?違うかも…」
「もう良い、それよりこれはどのようにして使う」
「あ、それは…」
スマホの機能全てを説明することはとても難しそうで、私はとりあえず画面を見てもらい、通話機能とそれに関する事を説明する事にした。
「…………解せぬな、同じような物を持っている相手と通話できる事は分かったが、どの様にしてその声を飛ばしておる?」
「えっと…それはですね…………………」
(そんな事考えたこともないから分からないよ。でも確かに、どうやって声をスマホからスマホに飛ばすの?電話のシステムってどうなってるの?)