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【イケメン戦国】オレ様とカエル

第13章 中秋の名月



「この時代は大きな宗教派閥になるほど僧侶であっても武装して戦った時代なんだ。特に顕如は彼の門徒を率いて一揆を起こし信長様たちに反抗した僧侶の一人だ」


「そうなんだ…。じゃあその時の怨みから今回の本能寺の変を起こしたって事なんだね、きっと…」

「ああ、一向一揆では、織田軍は容赦なく敵を殲滅させたからな。大勢の門徒たちを殺された顕如の恨みも深い」


あの日、そんな恨みを抱えた人物があの場にいたのかと思うとゾっとして肌が粟立つと同時に、織田軍の一向宗への所業にも胸が締め付けられた。


「信長様は、随分と酷い戦をして来たんだね」

この三ヶ月、信長様を見て来た中ではあまり感じられない事の一つだけど、この間の戦場での武将たちの目のギラつきを見る限り、こう言った話も嘘ではないのだとは思うようになった。


「彼が生まれ育った尾張と言う土地は小競り合いの絶えない土地柄で、親戚同士の諍いも頻繁にあった所だからね。それに信長様自身、兄弟にその命を狙われて来たから、害をなす者に容赦なく鉄槌を下すようになったのも頷けなくはない」

「そうなんだ…」

そう言えば、初めて人を手に掛けたのは、兄弟の放った刺客だって言ってた。
平然とした顔で言っていたけど、傷つかないはずはないのに…、


「でも信長様は結構優しい所があるから、きっとお母さんの愛情が深かったんだろうね?」


態度は荒々しいけど、最後はいつも優しくて…


「いや、残念だけどそれはない」

「え?」

スパっと、私の予想は佐助君の言葉で砕かれた。

「信長様の母は、彼の兄弟の側について、信長様の命を狙う事を止めなかったんだ。彼は、実の母親にも裏切られた事になる」


「ひどい……」

だから信長様は今でも身内を、家臣を信じきれない…?


『さぁな、だが身内の裏切りなど珍しい事ではない』


戦に行く馬の上でそんな事を信長様は言っていた。


何の気ない表情で言っていたけど、きっとそうなるまでに、信長様は沢山の涙を飲み込んで、感情を殺して来たに違いない。

もう…今となっては出来ないけど、私の腕は信長様を抱きしめたくて堪らなくなった。




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