第13章 中秋の名月
あの日信長様を本能寺で襲った犯人が捕まったの?
ブワッとあの日の炎の映像が一瞬で蘇った。
「睨んでいた通り、元本願寺法主の顕如でした。潜伏先を突き止め捕らえました。間もなく光秀が連れて到着しますが、如何致しますか?」
秀吉さんの言葉に、あの事件がまだ終わっていなかったのだと再認識する。
この三カ月、自分のことに必死だったから、信長様を本能寺で襲った犯人の事とかすっかり頭から抜けていた。
でも捕まったのなら良かった。それに犯人は”顕如”と言う名前の人で、光秀さんじゃなかったって事。それが何よりも嬉しかった。
「伽耶を見送り次第行く。それまでは地下牢に放り込んでおけ」
「はっ!」
秀吉さんは軽く頭を下げ、
「伽耶元気でな。気をつけて帰れよ」
私には優しい笑顔をくれ城へと戻って行った。
「犯人、見つかって良かったですね」
「ああ…」
もっと嬉しそうかと思ったけど、信長様の表情は全然変わらない。こんな時代だし、命を狙われるのは初めてじゃないからかな…?
「行くぞ」
「あ、はい」
信長様は再び体の向きを変えて大手門の方へ歩き出す。
「佐助はもう来ておるようだな」
信長様はそう言うと、大手門前に立つ佐助君らしき人を指差した。
「あ、ほんとだ」
でも……あれ?
信長様…何であれが佐助君だって分かったんだろう……?
紹介をする前なのに佐助君を言い当てた事に引っかかりはしたけど…、
(まぁ、待ち合わせ場所にいれば当たり前か)
あまり深くは疑わず、佐助君の名前を呼んだ。
「佐助君!」
佐助君は手を上げ私の声に応える。
「早いね、かなり待った?」
「いや、今きたところだ」
「良かった。でもお待たせしました」
お決まりの挨拶を交わしいよいよ信長様に紹介する番が。
「信長様、こちらがーーーーーっ、えっ!?」
私が紹介する前に信長様は刀を抜いて真っ直ぐに佐助君の目の前に突きつけた。