第13章 中秋の名月
「っ、ん…」
「伽耶」
「っ、は、…はぁ、はぁ、……ん!」
離れた唇は、間髪入れず私の首筋に吸い付いた。
キスだけでは終わらないと伝える様に、信長様は私の着物の袷を強引に開く。
「…っ、んんっ」
顕になった鎖骨が甘噛みされ、くぐもった声が漏れた。
「信長様…っあ、んん!」
暴かれた袷に熱い手が入れられ唇が再び強く塞がれた。
やめなきゃいけないのに、抵抗しなければダメなのに、
「ん、……はっ、…んっ」
強引な行為の中に信長様の熱い気持ちが感じられて止められない。
最後に…
ううん、ダメっ!
でも、私も本当は…
だからダメっ!
抱かれたい自分とそれはダメだと言う自分がぶつかり合う。
でも…、
「…っ、信長様」
心は正直だ。
最後だとしても触れ合いたい気持ちが勝り、信長様の首に両腕を巻き付けた。
「…伽耶?」
信長様の動きが止まった。
「何のつもりだ…?」
「……っ」
何を聞かれても言葉にする事はできないから、私はもっと強く信長様に抱きついた。
「なぜ、拒まぬ…?」
困惑した声
「……」
嫌な静寂が訪れる。
耳に届くのは、自分の心臓の音だけ。
今、何を考えてるの?どんな顔してる?
こんな事を考えなくてもいいほどにキスして頭の中をぐちゃぐちゃにして欲しかったのに…
「このまま黙って抱かれるつもりか?」
そう冷たく言い放って信長様は私の腕を引き剥がした。
「貴様…俺に抱かれるつもりなら、言うべき言葉があるだろう?」
苦しそうな目は、私の心を読み取ろうと鋭く見据える。
「ここに残ると言え」
信長様の本心が突き刺さる。
「伽耶、答えよっ!」
「……」
言葉は何一つ出てこないのに涙だけが溢れ、フルフルと、信長様の目を見つめたまま首を横に振るのが精一杯だった。