第12章 戦
信長様の心臓の音よりもはるかに早い自分の鼓動に更に緊張は高まり、手当てをしたいのに体が言うことを聞かない。
「貴様は信用ならん、顔を見せろ」
「えっ………っ」
頬に当てられた手が強引に視線を合わせて来た。
「………っ」
目の奥には熱が灯っているように見える。
「貴様が俺の腕からすり抜けるように落馬した時には肝が冷えた」
低い声がゆっくりと注がれる。
「心配かけて…ごめんなさい」
本当に心配させたのだとその声音が教えてくれる。
「あの…」
信長様の唇が私の額に押し当てられた。
「……っ、それよりも手当てを先に…ん、」
次は頬にキス
「だから…」
「伽耶」
「っ……」
ドクンッ!
見つめられ名前を呼ばれれば鼓動が大きく跳ねた。
顔が近づいて来る。
次に何をされるのかは、もう分かってる。
「嫌なら拒め」
拒むなんて…そんなのできるわけない。
「………」
目を閉じて、唇が重なるのを待った。
「………っ、んっ」
だって、ずっと思ってたから…
この唇に、触れられるだけじゃなく、もっと深く探れられたいって…
「ぁっ、ん……、」
クチュ、と水音が耳に届き、お互いの舌が絡み合う。
「んっ、……ふっ、」
信長様が角度を変える度にはしたなく吐息が漏れた。
どうしよう…私、この人の事が本当に好きだ。
先に待ち受けるのは別れなのに、好きな人とのキスは蕩けそうでいつまでもしていたくて…
「ぅ、ん……」
力が抜けて信長様の胸に崩れ落ちるまで、私はその甘さに酔いしれた。