第12章 戦
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信長様の手当てをしたあと、久しぶりの湯浴みを済ませた私は、湯冷ましに外の風にあたりに来た。
「まだ熱いや…」
鼓動は落ち着いたけど、キスした唇はまだ熱を持ったまま。
(あの時の感触がまだ残ってる)
何度も重ねられた唇の感触が残っていて、そっと指で唇を撫でた。
「あんなキスがあるんだ…」
深く重ねられたキスは想像以上に私を蕩けさせた。
吐息が漏れ、その度にチュ、チュウ、とキスの音が漏れて快楽へと誘われた。
(キスって、こんなに気持ちよかったっけ…?)
信長様の舌が口内のどこに触れても感じてしまって…
「なんか私…欲求不満みたい」
ファーストキスでもないのに、キスがあんなに気持ちが良いものなんだと初めて知った。
「はぁ、思い出したら余計火照ってきちゃった」
今夜はきっと興奮して眠れそうにない。
冷ましても冷ましても思い返すたび熱くなる顔を手で仰いでいると、
「伽耶さん」
深ーい暗闇から声がした。
(え、人の声?しかも私の名前呼ばなかった!?)
目を凝らして見ても暗闇には何も見えない。
もしかして幽霊?
「伽耶さん」
もう一度、今度ははっきりと聞こえたから、幽霊じゃないことは確定した。
「だ、誰っ?」
もう一度暗闇を凝視してみると人が姿を現した。
「ひっ!」
「しーっ、伽耶さん俺だよ、佐助」
「え?佐助君っ!」
クルクルっと鮮やかにバク宙をしながら、佐助君は私の目の前に現れた。
(本当に忍者だ…)
「こんばんは伽耶さん。君にこんな所で会えるなんて思わなかった」
「こんばんは佐助君。私も…驚いたよ。今もだけど、その…佐助君が上杉軍にいたから…」
「君に黙っていたことは謝る。知らない方がいいと思ったし、まさか君が戦場に現れるとは思わなかったら」
「ここにいるのは…私も想定外だったから、でも会えて良かった」
「落馬した君を見た時は驚いたけど、元気そうで良かった」
僅かに口元を綻ばせ、佐助くんは笑った。