第12章 戦
あれは確かに佐助君だった。
落馬して死にそうになったからその後彼を確認する事はできなかったけど、確かに佐助君だった。
彼が助けたというのは上杉謙信…?
それなら彼は、敵方の忍者…?
様々な疑問が頭に浮かんだけど城に入ってしまった私に確認する術はなく、何となくモヤモヤした気持ちだけが残った。
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信長様の命知らずな作戦が成功し上杉軍は撤退。
取り返した支城内は歓喜の声で溢れていた。
あちらこちらでお酒が振る舞われ、皆それぞれに喜びを分かち合う。
信長様始め武将たちは広間に集まりそれぞれ報告をし合っていた。
「結局、信長様に全部持ってかれちまったな」
「ほんとですよ。俺たちの出る幕なかったですね」
政宗と家康は上杉謙信の首を取り損ねたことをボヤいている。
「ふっ、貴様らが両脇を押さえていたからこそこの城への道が開けた。礼を言う」
「「ははっ!」」
「伽耶、貴様も良く耐えたな」
「ありがとうございます。戦…終わったんですよね?」
「そうだ。俺たちの勝利だ」
信長様は気分上々に勝利のお酒を煽る。
「怪我人の手当てや炊き出しを頑張っていたと報告は受けている。戻り次第何か褒美をやる。考えておけ」
「良かったな伽耶」
ニッと笑う信長様に、政宗たちの笑顔に、戦が本当に終わったんだと実感した。
「今日はこの支城で兵を休ませ明日安土に向けて出発する。貴様らも良く休んでおけ」
「「はっ、」」
話が終わり、政宗と家康は部屋を出るため立ち上がった。
「伽耶」
家康が私を呼ぶ。
「何?」
「これ…」
渡されたのは、軟膏と包帯。
「?私…怪我してないよ?」
「あんたにじゃない」
「じゃあ誰に?」
まだ救護をするのかな?
「ほんと鈍いね。怪我してるのは信長様。あんたを助けた時の傷でしょ?」
「え…っ?」
「ちゃんと手当てしてあげなよ」
そう言うと、家康は政宗と出て行ってしまった。