第12章 戦
「はぁ〜、信長様たち..大丈夫かな…?」
誰かが天幕に運ばれて来る度、信長様たちじゃないかと思い気が気じゃなかった。
それに、怪我人の手当てすらビビって中々できなくて、
「私…足手まといだな」
浅い傷は何とか手当てをする事ができたけど、深い流血ものは本当に吐き気と失神が交互に襲って来て、苦しんでる人を前に決して見せてはいけない姿を晒してしまった。
「はぁ、情けない」
こんな私に出来ることはもう一つしかない。
(神様お願いします。皆んなをお守り下さい)
そう、神頼み。
空に向かって手を合わせる。
初詣だって、こんなにも目を瞑って祈ったことが無いほどに、たくさんたくさん皆んなの無事をお願いした。
「伽耶っ!」
ドクンッ!
(あ…)
聞き慣れた、そして待ち侘びていた声。
振り返れば、いつものように口の端を上げ笑う信長様の姿。
「信長様っ!」
(良かった、無事だ)
ただ嬉しくて信長様の元まで走った。
「信長様、お帰りなさい。ご無事でよかった」
「貴様も元気そうだな」
ニッと笑う顔はいつも通りだ。
(本当に元気そう。でも怪我がないか一応確認しよう)
怪我がないかを確認する為、素早く視線を信長様の体の上から下まで走らせた。
(………ん?)
よく見れば、信長様の甲冑にはあちらこちらに血が付いていて…
「血がっ!信長様っ、どこか怪我をしたんですかっ!?」
慌てて手拭いを取り出し傷口を探した。
「伽耶待て」
「怪我したとこ、見せて下さい」
けれど、顔、手、足…と、順に見たけど怪我はしてなさそう…?
「落ち着け、俺の血じゃない」
慌てる私の肩を掴んで信長様は止めた。
「えっ?じゃあ誰の……っ!」
(こんなに付いてるのにっ!?)
意味が分からずもう一度甲冑の血に目を落とした。
(……違う…信長様の血じゃない。これは…返り血…..?)
そう思うと、手ぬぐいを持つ手が自然と信長様から引けた。