第12章 戦
「それは困る。心配させてしまうのも申し訳ない」
ああ本当に、スマホがないってこんなにも不便だ!
「どうしよう…」
ここから安土に一人で帰るわけにも行かないし、伝言を頼む相手もいない。(佐助君は忍びだから絶対無理だし)
こんなにも他力本願でいたなんて、呆れてしまう。
「伽耶様、間も無く怪我人が運ばれてきます。天幕の外に出すなと信長様からも言われておりますので、どうぞ中へ」
家臣の方が中々来ない私を呼びに来てくれた。
「すみません。すぐ行きます」
ダメだ、今はそんな自分勝手なことを考えてる場合じゃない。他力本願な上に自分勝手なんて救いがない。
ここを発つ日までは、みんなへの恩返しをできるだけしようと決めたはず。
大丈夫、佐助君はきっと10日間の間は来ない。来たとしても何か用事でいないって思ってくれるはず。
パンっと、両頬を軽く叩いて気合いを入れる。
今はこの戦が無事終わることと、私にできる事に集中しよう。
「手伝いますっ!」
腕まくりをして、救護の天幕へと急いだ。
・・・・・・・・・・
テントの中はあっという間に怪我人で溢れ返った。
認識が甘かった。
怪我人とは、大怪我人の事。
かすり傷をイメージしていた私は、運び込まれて来た重傷人を前に目眩を起こして倒れそうになった。
辛いなら無理はするなと言われたのも最初の内だけ。そんな余裕はみんななくなり…
「大丈夫ですか?」
かけられる言葉はそんな言葉くらいで、逃げ腰になりながらも自分にできる精一杯の事をして過ごした。
そして……
「ちょっと外の空気を吸ってきます」
天幕内が少し落ち着き、私は気分転換に外へ出た。