第12章 戦
現地に着くと、既に陣を張り終えた先発隊が私たちを出迎えた。
陣の中には織田軍の旗が掲げられ、軍議用の椅子やテーブルが設けられている。
周りには天幕が張られ、炊き出しをする人や武器を運び込む人など、人々が忙しく行き来する。戦と聞いていなければキャンプだと勘違いできたかもしれないのに、そんな楽しい場所ではないのだと、甲冑音が教えてくれる。
「伽耶キョロキョロするな、こっちへ来い」
椅子(床几と言うらしい)に腰掛けた信長様が私を呼ぶ。
「あ、はい」
見れば、政宗達ももう座っていて私を見ている。
「お前、物見遊山に来たわけじゃないぞ?」
初めての光景に落ち着かずキョロキョロする私に政宗が可笑そうにそう言えば、
「あんなふにゃふにゃしてて、あの子すぐに死んじゃうんじゃないんですか?」
家康は呆れた声を出す。
そうだ、ここは戦場。いつ鉄砲玉や弓矢が飛んできてもおかしくないんだ。
バッと、両手で頭を隠してみんなのいる場所へと急いだ。
「何をしている?」
そんな私を見て今度は信長様が尋ねた?
「え?あの…矢が飛んで来ても避けられる様に手を…」
できれば私にもあの甲冑の頭部分をお貸しいただきたい位だ。
「ククッ…それで避けられると思っておる所が貴様の甘っちょろくて可愛い所だな」
「なっ…!」
それは貶してるのか?褒めてるのか?
どちらにしても私の顔は熱くなり、それを見た信長様と政宗は声を出して笑い、家康は大きなため息を吐いた。
作戦会議はそれぞれが収集した情報を元に、三成君が立てた作戦を説明していく。
現在、上杉軍によって取り囲まれた城の城主に信長様達の軍と同時に撃って出る様に伝え、挟み撃ちをすると言う作戦だけど、取り囲まれた城の中に使者をどうやって送り込むかなど、命懸けの作戦が話し合われた。
そうして軍議は終了し、半刻後に作戦を実行に移す事になった。