第12章 戦
(落ち着け私…)
息を整え胸に手を当てて佐助君に会った時の事を思い出す。
「確か彼は…」
「彼だとっ!?男かっ!」
急に声を荒げる信長様。
「もう、落ち着いて下さい。今思い出してるんですから…っ!」
“彼”と、聞いただけでその反応?
付き合ったら束縛するタイプかな…?なんて思わず考えてしまう勝手な自分に苦笑してしまう。
ああ、でもそれどころじゃない、今は佐助君の事を考えないと…
「彼の名前は佐助君と言って…」
パルクールのように登場した佐助君は、最初は不審者だと思ったけど…
「私と同じ時代からワームホールでこの時代に来た人です」
「……貴様と同じ境遇の奴がもう一人いると言う事か?」
「はい……って、信じてくれるんですか?」
(絶対疑われると思ったのに?)
「貴様と言う生き証人が目の前におって疑うも何もなかろう?」
「確かに…」
(でも、当たり前に受け止めてくれる所が嬉しい)
「話を進めよ」
「あ、はい」
私は佐助君が忍者であると言う事と武将の部下であるっぽい事を隠して、あの日佐助君が話してくれた事を信長様に伝えた。
「なる程…」
信長様はそう言って少し考え込んでから…
「して、その男とは次いつ会うつもりだ?」
質問をした。
「え?それは多分…ワームホールが現れる日かなって…」
そう言えば、そんな詳細な約束はしていない。
「貴様はまことその男のことを信じておるのか?」
「信じてます…よ?」
今の今、信長様に指摘されるまでは…
「その男は、この時代で何をしておる?」
「それは…」
忍者です。
なんて言えるわけもなく、
「あの、彼も私と同じで誰かを助けたらしくて、その人の所に身を寄せていると聞いてます。だからきっと、その人のお手伝いをしてるのかな…って…」
嘘はついてない。と言うかつけるほど彼のことを知らない。
あの日、佐助君が来てくれた日は人生が終わったかに思えた日で泣けてきて…、だから彼が未来に帰してくれるって聞いて、私のあらゆる疑問にちゃんと答えてくれて頑張ろうって思えて…、それだけでいっぱいいっぱいだったから、佐助君の事を詳しく聞くほど自分に余裕がなかった。
「解せぬな。其奴…もしや忍びや間諜の類ではないだろうな?」
「え…?」
鋭い質問にドクンと胸が鳴った。