第12章 戦
「私は、信長様に何を言われても帰りたい気持ちは変わりません。それに人の気持ちは変わるもの。信長様もきっと、私がいなくなればすぐにその気持ちは忘れます」
恋心ほど当てにならないものはない。その辛さを味わったばかりなら尚更、二度と同じ轍は踏まない。
でも、好きだと言ってもらえた事は忘れない。
大地はいろんな意味で私を縛り付けたけど、彼は一度として私を好きだと言ってくれた事はなかった。束縛が彼の私への愛情表現なんだとあの時は疑わなかったけど、今ならそれは違うと分かる。
結局彼は妊娠をした浮気相手を選んだ。私は彼にとってそれ位の存在だったと言う事だ。
「俺の気持ちは変わらん」
私の言葉を信長様は真っ向から否定する。
でもこの否定は、なんて甘い言葉なんだろう…
同じ時代にいたならばこの気持ちに答えない理由がない。
「みんな最初はそう言うし思うんです。でもきっと変わってしまいます」
「頑なだな」
分かってる。頭が固いってことは。
でも、私が信長様を好きになったのが何よりの証拠。
大地が一生好きだと思って、忘れられないと思っていたのに、その大地のことがどれほど好きだったのかが薄れているほどに今はあなたに惹かれてる。
こんな風に、人の気持ちは変わるもの。
『伽耶、お前とは終わりだ』
大地から言われた突然の別れの言葉…。
あの言葉をまた聞くのは耐えられそうにない。しかも生まれた時代の違うここで…。
だから帰るの。永遠だと約束できるものが何もないから、私は予定通りにこの戦国の旅を終えて500年後の日本へと戻る。
あ、戻ると言えば…
感傷的になっていたけど、とても現実的なことを思い出した。
「そう言えば、戦って、何日ほどかかるんですか?」
聞き方おかしいかなと思ったけど、帰る日が迫っている身としては聞いておかなければいけない。