第12章 戦
集合場所である城門前に行くと、もう全ての準備が整い出発を待つだけになっていた。
(わぁ、みんな甲冑姿だ。それに馬がたくさんいる…)
戦にこれから行くわけだから当たり前だけど、目の前で本物を見るとやはりその迫力に飲まれてしまう。
「伽耶」
ガチャガチャと、甲冑の耳慣れない音と迫力に戸惑っていると、そんな音を掻き消すように男らしい声が私を呼んだ。
「信長様…?」
振り返れば馬に乗った信長様が私に向かってくる。
(信長様も甲冑だ)
思えば、初めて会った時もこの甲冑姿だった。あの時は訳が分からずパニック状態だったからよく見なかったけど、黒を基調とした甲冑に陣羽織を羽織る姿は今は眩しく見える。
「伽耶来いっ!」
見惚れていだ相手は私に手を伸ばし、その手を握り返すと力強く馬の上へ引き上げられた。
「逃げずに来たようだな」
「逃げたら怒るって言ってたじゃないですか」
「ふっ、貴様を仕置きする事ができなくて残念だ」
当たり前に私の腰に片腕を添えて信長様は耳元で囁く。
(し、仕置きって…言い方がもうエロい)
「…っ、くっつき過ぎです、もう少し離れて下さい」
「その願いは聞いてやれん。貴様を抱きしめても逃げられん唯一の場所だからな」
腰の腕は巻き付くように私を抱き寄せる。
「っ、態度、急変すぎませんか?」
出会った頃は襲われそうな勢いがあったけど、最近は何もしてこなかったのに、なぜ今朝から急に過剰と言えるほどの甘〜い接触とエロさ倍増…
「仕方あるまい、貴様を手に入れたいが時間もない。手段は選ばぬ。貴様も遠慮せず俺に向かって来い」
どうやら、眠れる獅子を起こしてしまったらしい。
獰猛と化した信長様を封じ込める自信なんて全くないけど、私も未来に帰りたい心は譲れない。