第12章 戦
人が死を迎える方法は様々だ。寿命が一番理想的だけど、病気や事故などもある。でも戦で死ぬと言うのは私の人生の中には存在しない。
この時代でこんなことを言うのはやはり甘っちょろいと言われてしまうだろうけど、怖いものは怖い。命をかけられるほどのものなんて私にはない。
そう、あんなに大好きだった頃の大地にだって、彼のために死ねたかと聞かれれば無理だって即答できる。
告白をされたばかりなのに、嬉しかったのに、死にたくないなんて弱気な発言をしてしまった私を信長様は呆れて嫌いになるに違いない。でも、何よりも恐怖が勝っていて身を守る言葉ばかりが口から飛び出してしまう。
(こんな私を、嫌いになるよね…?)
呆れているだろうと覗き込んでも信長様は表情を変えていない。それどころか握る手に力を込めた。
「だからこそ貴様を戦に連れて行く。貴様には俺の全てを見て覚悟を決める必要がある。俺の側にいるとはどう言うことなのか、それをよく見てよく理解をしろ。その上で貴様にここに残ると、俺が好きだと言わせたい」
ニッと笑いそう言い切る顔は晴れやかで清々しい。
私が信長様を絶対に選ぶと思って疑っていないみたいだ。
「貴様の事は俺が守る。俺と共にいて貴様が死ぬことなどあり得ん」
(あ、ヤバい…)
「でも、私なんかを連れて行っても足手まといになるだけですよ?本当に何もできないのに…」
行きたくないのに、もう一人の自分は行く覚悟を決めようとしてる…
「俺の側にいるだけで良い。側にいろ」
握った手を信長様の方に引き寄せると、私の指先にチュッとキスをした。
(あーーもうっ!)
とどめのようなそのキスに、KO負けをした。
「……っ、いつからですか?」
私としては、いつから戦に行くのかを聞いたつもりだったのに、
「貴様が俺のために寺の子ども達を助けていると聞いたときからだ。俺のために頑張る貴様を愛おしいと思った」
信長様は、いつから私のことを好きになったのかを聞かれたと思ったらしく、その胸の内を真っ直ぐに伝えて来た。
「っ、…そうですか」
ダメだ。そんな甘い言葉を言われて、質問が違いますとは言えない。
これから戦に連れていかれると言うのに、私の顔は蒸気が噴き出しているかのように熱くなって、どうしても口元がニヤけた。