第12章 戦
撃退とか首を挙げるとか、その言葉の先は全て人の死に繋がっているのだとみんな分かっているのだろうか?
戦だと言われていなければ本当にただの会議だと思いそうな程に物事が迅速に話し合われ次々とやる事が決められて行く。
信長様はその後もそれぞれの武将や家臣たちに次々と命令を下し、命を受けた者から順に部屋を後にして行く。
気づけば、広間には私と秀吉さんと光秀さんの三人のみが信長様の前に残った。
「伽耶」
「…ひゃいっ!」
緊張で声が上ずった。
「なんて声を出す。寝ておったのか?」
ふっと幾分か和らいだ表情を見せる信長様に少しホッとしたけど、もしかしたら私にも何か命令が下されるのかと不安になった。
「…っ、寝てません」
ただ、あまりにも簡単に、しかもみんな当たり前に”戦”と言うものを受け入れている事に驚いただけ。
信長様の口からどんな言葉が飛び出すのかを不安いっぱいで見つめていると、
「秀吉、光秀」
信長様は二人の名を呼び目で何かを伝えた。
「?」
二人は何かを察したように頭を下げ部屋から出て行った。
(二人ともどうしたの?)
今朝の厨からこんなことの連続だ。
また何かされるのかと身構えていると、
「……さて」
信長様は立ち上がり固まったままの私の前に来て腰を下ろした。
「………」
「そんな不安そうな顔をするな」
そっと手が私の頬に添えられた。
「……っ、無理です。だって…」
人が死ぬかもしれないのに不安にならないなんて無理だ。現に心臓はあの厨からずっと嫌な音で鳴っている。
「戦には貴様も連れて行く」
「え?」
思いがけない言葉に耳を疑った。
だって歴史のドラマで見る限り、この時代は男尊女卑で女の人はとても軽んじられていて、戦に女の人なんてって考え方で、だから合戦シーンで女の人なんて見た事が無いから…
「どう..して?」
嫌だと言うのは違う気がして、こんな言葉が出た。