第12章 戦
振り返れば、
「のっ、信長様っ!?」
「これで俺から逃げたつもりか?」
楽しそうに私を見下ろしながら私の前に手をつき顔を近づけた。
(ち、近いっ、政宗並みだっ!)
「にっ、逃げるなんてとんでもない、今日は忙しくてここで朝餉を…」
言い訳をしながら私は椅子から立ち上がり一歩後ずさった。
「そうか。ならば俺もここで朝餉を食べる事にする」
「へっ?なっ、何でっ!?」
「無論、貴様を食すためだ」
するっと私の腰に手が回ると素早く引き寄せられた。
(なんて鮮やかな手つき…!!)
「しょっ、しょっ、食すっ!?何っ?どう言う意味ですかっ?」
急に迫られ頭は上手く回転しない。
「言葉通りの意味だ。貴様には直接体に言い聞かせた方が早そうだからな」
ニヤッと、口角が上がった。
「ま、またまたぁー、みんながいる前でそんな事できるわけ…」
(そうよ、こんなにまだ厨番の人たちがいる前で何かできるはず…)
「ふっ、俺を誰だと思っておる?」
「へっ?」
「おい貴様ら、今すぐここから出ていけ」
信長様のそのひと声で、
「ははっ!」
厨番の人たちは作業する手を止め頭を下げるとそそくさと厨から出て行き始めた。
「なっ!」
(どうしたのみんな、そんな王様の命令聞くみたいに絶対服従な態度とって…)
「しばらくは厨に人を近づけるな」
「はっ、かしこまりました」
最後の一人が信長様の命令に頷き厨から出て行ってしまった。
「うそっ!みんな待って、置いていかないでー」
(忘れてたっ!ここは戦国時代でこの人このお城のお殿様だった!)
昨日のお祭りで信長様の凄さを目の当たりにしたばかりなのに、あまりに近くにいすぎて、しかもキスの事で頭がいっぱいいっぱいで偉い人だって感覚が薄くなってた。
「これで二人きりだな」
嬉しそうな、してやったりな顔でそう言うと、信長様は私の腰に手を回したまま私を作業台の上に倒した。