第11章 晩酌③ 〜祭りの後編〜
そこで伽耶は、此度のことを目にする。
分かりやすく喜びを伝える伽耶にやはり心はくすぐられた。
何かをしてこんなに喜ばれたことも感謝をされたのも初めてかもしれん。
そして極め付けはあの言葉…
「信長様って、本当に凄い人ですね」
打ち上げ花火を大陸から取り入れた話をすると、伽耶はそう言って笑顔を見せた。
「?貴様…今日はやけに俺を褒めるな。これは、明日はまこと嵐やもしれんな」
その笑顔に心を持っていかれまいと、わざと奴が口を尖らせそうな言葉を言った。
はずなのに…
「ふふっ、今日はたくさん信長様の事を褒めたい気分なんです。だって、この豊かな町を作ったってだけでも凄いのに、お寺の子ども達をあっという間に幸せにしてあんな素敵な笑顔を引き出すなんて、凄すぎです。本当に感謝してるんです」
奴はなおも俺を褒めた。
ピューーーーと、花火が夜空に打ち上げられ、パーンと大きく花開くと、奴の顔が花火に照らされた。
「わぁっ!この花火は大きいですね!お祭りと言うご褒美を頂いたばかりなのにこんな花火まで見れて、今日は信長様からたくさんご褒美を頂けて幸せです」
その綺麗な笑顔に、心を完全に掴まれた。
「俺も、褒美が欲しくなった」
手が自然と奴の方へ伸びる。
「え?」
訳が分からず俺を見る伽耶の顎を掴んで引き寄せた。
「……?」
奴はまだ俺がこれから何をしようとしているかに気づいていない様だが、もう止められない。
奴の唇に軽く口づけた。
「………」
終始目を見開いたままの伽耶は何が起こったのかに気づくと、
「……!」
驚いて俺を見つめた。
そんな奴にまたもや初めての感情が込み上げる。
「褒美にはまだ足りんな。もう少し寄越せ」
再び口づけを落とす。
触れるだけでは物足りず、この柔らかな唇の奥深くに行こうと思った時、
「……っ、」
伽耶の吐息が漏れ、奴の手から握り飯が落ちた。
(これ以上は無理か…。また逃げ出されては敵わんからな)
差し込もうとした舌を止め、代わりに奴の唇を舐め味わってから唇を離した。