第2章 無人島か戦国時代か
「はぁ〜、やっと1人になれた」
京都からここまで、何度命の危険に晒されたんだろう?
部屋を見渡せば客室らしい綺麗な作りと調度品に、とりあえずは本当に織田家縁の姫として扱われるんだろうと安堵する。
「これから私、どうなるだろう…?」
京からここに来るまでは、政宗さんの馬に振り落とされないように踏ん張るのに精一杯で記憶はない。
「もうここで一生を暮らすのかな……」
気が抜けてゴロンと畳に寝転がって板張りの天井を眺めた。
「誰か…この状況を教えてくれないかな」
1人になれた安堵感の次は、不安感が押し寄せてきて目が潤み始めた。
「………っ、」
このまま泣いてしまおうとそのまま天井を見つめていると、ガタッと、見つめている天板が動いた。
「えっ!?」
驚きすぎると体は動かないもので、私は固まったままその動く天板を見つめる。
「よっ…っと、」
天板が外されると、今度はメガネ男子が顔を覗かせた。
「ひっ!」
「あ、待って、叫ばないで、怪しいものじゃないから」
(怪しい人は皆そう言うんだよ!)
心の中で思った声は口からは出ず、そのメガネ男子は天井からくるくると回転しながら私の横に着地した。
「パ、パルクール?」
慌てて身を起こして男性と距離を取った。
「ああ、確かにパルクールみたいだな」
あまり顔には出てないけど、多分笑って言ってる?
「って、あれ?パルクールの意味が分かるの?」
ここに来てまずぶち当たった言葉の壁が…ない?
もしかして…と、淡い期待が頭をよぎる。
「俺のこと…覚えてない?」
そう聞かれ、私は彼の顔をじっと見つめる。
(こんな眼鏡イケメン忘れるはずないけどな、…でも何だか会った事があったような気もする…)
うーーーん、と、必至で記憶を辿ると、それはとても浅い位置にあった。
「…………………あっ!本能寺跡地で会った白衣の人っ!?」
「正解。良かった。俺はちょっと記憶が薄れていたから間違っていたらどうしようかと一か八かの賭けだったんだ」
顔の緊張を解いて彼はそう言った。
「どう言う意味?」
「俺は猿飛佐助、君を現代に戻してあげる」
「えっ!?」
どう言う意味っ!?