第10章 夏祭り
「だけど今日、あの子たちはお腹いっぱいに美味しいものを食べることができたんです。しかも日が沈むまで信長様たちに遊んでもらって……、私一人ではあんな風に子どもたちを幸せで満たしてあげることはできませんでした。信長様たちみなさんのおかげです。本当に、ありがとうございました」
「腹の虫が恵まれている証か。貴様らしい甘っちょろい意見だな。だがその甘っちょろさが此度の結果を生み出した。これは貴様の努力の成果だ。礼を言う必要はない」
「信長様…」
「俺は貴様の様には動けぬし、これからも考えを変える気はない。だが貴様の頑張りに応えてやりたくなったのも事実だ。貴様は結果としてこの俺を動かした。中々に貴様は侮れんし面白い。これからも俺を楽しませよ」
気分は爽快だとでも伝えてくれる様な笑顔に胸はザワザワと騒がしくなって行く。
勝手な事をと怒られるとばかり思っていたのに、こんな風に認めてもらえるとは思ってなかったから本当に嬉しい。
「ありがとうございます。その言葉を頂けただけで頑張った甲斐がありました。嬉しくなったらお腹が空いたので私もおにぎりもらって来ますね」
まだ二人で話していたくて、しかも褒められて天にも昇る気持ちで自分のご飯を取りに行き、また信長様の元へと戻った。
「お待たせしました」
おきにぎりを手に持ったまま、縁側に腰掛ける信長様の横に座った時、
ドドーーーーーーン!!!!!
「えっ、何?」
突然響いた大きな音。
上を向けば、暗くなり始めた夜空に大きな花火が一発、打ち上がった。
「わぁっ!花火」
(そういえば花火も打ち上がるって言ってたっけ?)
現代と何ら変わらない花火が次から次へと打ち上げられ夜空に大輪の花を咲かせていく。
「……綺麗ですね」
「そうだな」
「この時代にもう打ち上げ花火があったんですね。全然知りませんでした」
花火は超現代的なイメージだったからこの時代で見れるなんて驚きだ。
「大陸でこれを見た商人の話を聞き取り入れた。日ノ本でこれを見られるのはまだこの安土だけだ」
そう誇らしげに話す信長様は花火の光に照らされてとても眩しい。