第10章 夏祭り
「だが僧侶からは、俺たちが思っていた内容の話などは一切なく、出てくるのは貴様への感謝の言葉ばかり。すぐに俺たちの勘違いだと分かった」
「誤解がすぐ解けて良かったです」
(遊具=淫具って、ホントありえないし!)
これを言ったのはきっと光秀さんだなと心の中で思いながら、私は信長様の話に耳を傾ける。
「正直、貴様がここまでやるとは思っていなかった。僧侶から貴様のことを聞けば聞けほど、貴様の強い思いと頑張りが良く分かった。安土に来て間もない甘っちょろい考えの貴様にやられっ放しでは俺もいられんからな。貴様の訴えを聞くことにした」
「信長様…では!」
「寺の改修と子どもたちの事はもう手を打った。この祭りは、これまで俺の代わりに頑張った貴様への褒美だ。貴様の作った遊具共々、今日は飽きるまで祭りを楽しむが良い」
「…っ、ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」
「礼には及ばん、彼奴らも楽しんでおるようだしな」
(あやつら?)
よく見れば、屋台のスタッフは全て武将たち。
私の視線に気づいて「よぉっ!」と、皆手を上げてくれた。
「みんな…」
あり得ない誤解をされお城に戻ったら一言文句を言ってやるって思ってたけど、屋台の売り子に扮したみんながカッコよくて素敵だから…もう全て帳消しになった。
「お姉ちゃん遊ぼう。コマ回そう!」
「遊ぼう」
屋台を堪能した子どもたちが呼びに来た。
「うん。遊ぼ」
そう答えると、
「信長様も遊ぼう」
子供の一人が信長様の袖を引っ張った。
(ああ、なんて大胆なことを…!)
泣く子も黙る大魔王の腕を大胆にも引っ張った子どもに怒るかな…?と、ヒヤヒヤしながら信長様の出方を見ていると…
「良いだろう。子どもと言えど俺は遊びでも手加減はせんぞ」
そんな心配をよそに、信長様はニッと笑い腕を捲った。