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【イケメン戦国】オレ様とカエル

第10章 夏祭り



飴細工や竹細工の店に、お面、風車に大道芸…

「わぁっ!」

私の時代とはまた違う祭りの雰囲気はとても新鮮で興味深く、ついつい感嘆の声が漏れた。

「見たいのか?」 

歩みが遅くなった私に信長様は聞いてくれる。

「大丈夫です。初めて安土の、この時代のお祭りを見たので気にはなりますけど…」

「金のことなら心配はいらん、欲しい物があるのなら言え」

信長様は歩くのを止めて、見たいのなら見ればいいと言うように顔で屋台の方を示した。

「ありがとうございます。でも、この時代の物を500年後に持ち帰るのは歴史を変えてしまうかもしれないからやめようって決めてるので…、買っても使えなくなってしまうので本当に大丈夫です」


「……そうか」

今日一番寂しそうな「そうか」に、胸はチリっとした。

周りを見渡せば、恋仲達で溢れてる。
夏祭りという雰囲気がいつもよりも恋人達の距離を縮めてくれるのだろう。皆手を繋ぎ、肩を寄せ、近くで囁き合い、とても親密で楽しそう。


チラッと信長様の手を見れば、腕を組み、固く閉ざされている。

当たり前だ。恋仲でも何でもない、私たちの関係はただの城の城主と居候だ。

祭りの屋台や提灯で彩られた街並みを浴衣で着飾って歩いても私たちの間には距離があって、手を繋ぐことも顔を寄せ囁き合うことはないんだ…


言ってることと考えていることの矛盾に苦笑している間に私たちは目的の寺の階段の下に着いた。


「この階段を登ればお寺があります」

「そうか」

今日はもう「そうか」しか言わないい気なのかな?そんなことを思いながら階段を登る。


「あの、今日はこのお寺で子どもたちと特別なことをしようと思ってて…」

信長様は何も言わずに私の話に耳を傾け階段を黙々と上がる。

「もし良かったら、信長様も一緒に参加してくださいね?」

コマ回しや輪投げなどしてくれなさそうだけど、子どもたちと良心さんとで一生懸命今日のために用意した、夏祭りの遊具。

「分かった」

短くそう言うと同時に、私たちは階段を登り切り、寺の境内へと着いた。



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