第10章 夏祭り
「寺の僧侶なら、以前伽耶から話を聞いた寺の者かもしれん。それならば色恋云々ではないだろう?」
きっとこの間の子供たちの世話をしている住職の事だと思った信長は心の中で安堵の息を吐き、皆の前では不敵に口角を上げて見せた。
「御館様、そう安心するのは早いかもしれません」
そんな信長の安堵を一瞬で砕いたのは光秀。
「なに?」
「伽耶はその者と二人遊具を作ると言って三成の部屋から書物を借り、嬉しそうにしている姿を俺は見ました。なぁ三成」
「はい、光秀様の言う通り、伽耶様に遊具の作り方の書物をお渡ししました」
「遊具?」
その言葉に皆ハッとなった。
「お前それって…」
秀吉は言いづらそうに口を開く。
「ああ、恐らくは大人の遊具(淫具)だ」
「!」
「坊主とは名ばかりの生臭坊主に捕まったってことかっ!?」(←酷い言いよう)
秀吉は悔しそうに言葉をこぼす。
「禁欲に耐えかねた奴らの性癖はかなり特殊だからな……」(←すごい偏見)
と、光秀はかなりな偏見を口にして皆の不安を煽る。
「要するに伽耶は、寺の僧侶に騙されて、貢がされて、その…」
最後の言葉を言うのは憚られたのか、家康は言葉を濁して顔を背けた。
「家康の言う通り、小娘は僧侶に騙され貢がされた挙句、お手製の淫具で弄ばれてると考える事ができるな」
家康の代わりに光秀が楽しそうにその言葉を口にした。
「っ、最悪だな…俺たちが何とかしてあいつの目を覚まさせてやらないと」
正義感の強い秀吉が立ち上がる。
「面白い、俺も行く」
政宗も立ち上がった。
「私もお供させて下さい」
三成も立ち上がり、家康、光秀も立ち上がった。
「俺が直接其奴と話す。家康、その寺に今すぐ案内しろ!」
合戦さながらの殺気を纏った信長が最後に立ち上がり、勘違い男たちは伽耶奪還のため一斉に寺を目指すことになった。