第10章 夏祭り
そして祭りの前日。
私は子供たちとのお祭りの準備のため、朝餉を厨でさっと済ませてお寺へと向かった為、いつもの広間には行かなかった。
〜そして広間では〜
「伽耶はどうした?」
膳も全て運び込まれた広間で、信長は声を上げた。
「伽耶なら厨で朝餉を済ませて急いでどこかへ出掛けていきましたよ」
朝餉を一緒に作っていた政宗がその問いに答える。
「は?聞いておらんぞ」
信長は顔をしかめ不服を漏らす。
「あいつ…好きな男でも出来たんじゃないですか?」
政宗がそう言えば、
「何?」
信長さは更に顔をしかめた。
「ここ最近、厨の余り物で何かを作っちゃ誰かに持って行ってるようで、聞いても答えを濁すから男だと思ったんですが…」
「やはりそうか。…あいつ、その男に貢いでる可能性があるな…」
政宗の言葉に、今度は秀吉が反応する。
「貢ぐだと?秀吉、詳しく話せ」
信長は珍しく半身を乗り出し、秀吉を急かす。
「実は…」
秀吉は城下で伽耶に会った際、手にしたばかりのお給金を全て使い、好きな反物を買えないほど金に困っていた事を伝えた。(←ちょっと盛られてる)
「あいつは真っ直ぐだからな、悪い男とは知らず簡単に騙され貢いじまったんだろうな」
秀吉の言葉で広間は静まり返り、皆思い思いの考えに耽る。
その中で一番面白くない思いを抱く信長が口を開いた。さんざん蛙憑だから恋はしないと言っていた女がそんな男に手玉に取られているなど不愉快極まりないからである。
「その男とはどこのどいつだ」
だが、誰もその存在は知らない。
そんな中…
「俺、ある噂を耳にしました…」
家康が静かに手を上げた。
武将たちの視線が一斉に家康に向けられる。
「家康、早く言えっ!」
「俺が聞いたのは、毎日のように町外れの寺で僧侶と会っている伽耶の姿が目撃されているって事です」
「僧侶!あいつ、寺の僧とそんな仲にっ?」
秀吉が叫ぶ。