第10章 夏祭り
三成くんの部屋を出て、廊下で書物のページをめくって見る。崩し文字で書かれた古文書はまだ読めないけど、イラスト付きだからこれなら私でも分かるし良心さんが読めるから問題ない。
「よし、楽しくなって来た」
コマや水鉄砲などの作り方が書かれた書物を見てワクワクしていると…
「随分と楽しそうだな」
聞いたことのある声。
振り返れば、
「光秀さん」
本当になぜだかは分からないけど、私は咄嗟に書物を後ろに隠してしまった。
「ん?何か手に持ってるのか?」
切れ長の目がキラリと光る。
「何でもありません。楽しい遊びがないかを探していただけで…」
「奇遇だな。俺も楽しい遊びがないかを探していた所だ。どれ一緒に探してやろう」
私の肩を抱きどこかへ連れて行こうとする光秀さんから素早く逃げた。
「だっ、大丈夫です。もう見つかりましたから。忙しい光秀さんのお手を煩わすのも申し訳ないですし」
(ここで捕まったら絶対に逃してくれない…と思う)
「急ぐので失礼します。あっ、お仕事頑張って下さいね」
漫画の一コマなら、ドビュンッ!!と言う効果音がつきそうな勢いでその場から逃げた。
「…ククッ、取って食べたりはしないといつも言ってやってるだろうに…学ばない小娘だ」
光秀は伽耶の出て来た部屋に視線を向ける。
「小娘から聞かずとも、この部屋の主に聞けばいいだけの話。…三成、光秀だ。入るぞ」
誤解その三は、光秀によって生み出されることとなる。