第10章 夏祭り
「秀吉さん」
「お前に似合いそうだったのにいいのか?」
笑顔でサラリと褒めてくれる。
「うん。可愛いけどお金も足りないしいいの」
「足りない?先日お給金が出たばかりだろう?厨仕事に針仕事、世話役と頑張ってるから、報酬はかなり弾んであるはずだが…」
(あ、やっぱり多めに頂いてた?)
何となくそんな気はしていた。
「あ、うん。ちゃんと頂いたけど使っちゃって…」
「もう使ったのか?」
「うん」
「そんな大金、何に使ったんだ?」
「それは…」
まるで無駄遣いをして親に叱られる子どものようだ。
「えっと…お団子とか?食べすぎてるのかも…でももう無いんだよねアハハ…」
そう言って笑っては見てみたものの、
(ヤバい、秀吉さんの顔、全然笑っていない…)
「あの、悪い事にだけは使ってないから。私なりに考えて、使いたいと思ったから使ったの。それだけは信じて下さい」
秀吉さんに真実を知られると信長様に情報が漏れてしまうから、政宗以上に本当のことは言えない。
「そうか、分かった。お前を疑うことはしないって決めてるからな。問い詰めて悪かったな」
やっと笑顔を見せてくれた秀吉さんは私の頭をひと撫でして去っていった。
そしてこれが誤解そのニとなった事に、もちろん私は気が付いてはいなかった。