第10章 夏祭り
〜次の日〜
朝餉の後、私は余ったご飯を厨から頂戴して子ども達におにぎりを握っていた。
「伽耶何してんだ?」
食材を手に政宗が厨へと入ってきた。
「おにぎりをね、余ったご飯で作ってるの」
「さっき食べたばかりだろう?まだ食べる気か?」
呆れた顔と声で言うと、政宗は食材を台の上に置いた。
一体、私はどれだけ食いしん坊だと思われてるんだろう?
「違う違う、これは私用じゃなくて寺…」
言いかけてふと、この事は言わない方がいいと思った。
それに、もし万が一信長様に伝わってやめるように言われたら困るし、これをする事で誰かに迷惑をかけているわけじゃない。
「んーと、秘密」
真実は伝えない事にした。
「なんだ、教えろよ」
政宗はお得意の顔接近攻撃をしてきたけれど…
「もー近いっ!今は言えないけどいつかちゃんと話すから」
そう言ってかわしたこのやり取りが、その後の誤解その一を生み出した。
そして…
「はぁ〜くたくただぁ〜」
お寺におにぎりを差し入れた後、子ども達と鬼ごっこや縄跳びをした私は
明日の筋肉痛が確定となった重い体を城に向かって歩かせていた。
「あ、もう提灯が下げられてる」
気がつけば、城下の街並みも数日後のお祭りに備えて彩られている。
いつも以上にひしめき合っている露店に目を向けると、お祭り用になのか女の子達がかんざしや反物を手に楽しそうに買い物をしている。
「あ、この反物可愛い」
朝顔の描かれた可愛らしい反物が目に入り、手に取りすかさず値段をチェックした。
(ああ、全然足りない)
初めてこの時代でもらったお給金は全て寄付してしまったから、今あるのは本当に何か困った時に持たされているお金のみ…
(ダメダメ、お金は必要経費以外寄付するって決めたばかりなのに、私って物欲まみれだな…)
買う事ができたとしても未来に持ち帰るわけでもなし…でも可愛いものはやはり欲しくなってしまうのは仕方のない事だ。
自分の物欲に叱咤しながら反物を元に戻した。
「なんだ、買わないのか?」
声が聞こえて振り返ると秀吉さんがいた。