第10章 夏祭り
次の日、私は差し入れを持って再び寺を訪れた。
「わぁっ!お姉ちゃんありがとう」
「ゆっくり食べてね。まだあるから」
子ども達の笑顔に癒されていると、昨日の僧侶 良心さんがお堂から出てきた。
「伽耶さん。いらしてたのですか?」
「良心さんこんにちは。お邪魔してます」
「子どもたちにありがとうございます。それであの…」
言葉の続きは聞かなくても分かった。信長様に話を通せたかどうかを知りたいのだと。
「あの…」
私は正直に、嘆願書ば受理され信長様の元へ届いている事。ただ順番があってそれを待ってほしい事を伝えた。
「偉そうに言っておいてなんのお役にも立たずごめんなさい。でもそのうちに順番が回ってきますので、諦めずに待っていて下さいっ!」
「…そうですか。あの子達のためにありがとうございます。ですがもう無理はなさらないでください」
「無理なんてしてません。それに信長様はきっと助けて下さいます。それまでは私も良心さんのお手伝いをさせて下さい」
「伽耶さんが?」
「はい。大きな手を差し伸べる事はできませんが、何か少しでもお手伝いができれば嬉しいです」
お寺の助けになりたい気持ちと、信長様への街の人たちの不信感を少しでも無くしてほしい気持ち。そして安土でお世話になったみんなに恩返しをしたい気持ちを行動で示したい。
「伽耶さん分かりました。では、無理のない範囲でお手伝いをお願いしても宜しいですか?」
良心さんは観念したように笑ってから頭を少し下げた。
「はい、宜しくお願いします」
こうして私のお寺通いが始まり、この事があらぬ誤解を生むことになる。