第10章 夏祭り
いつもと違う道を通って帰ると古びた階段が目に入った。
「随分と古びてるな…」
綺麗にはされているけど、階段が所々傷んでいて踏める場所が限られている。
「何があるのかなぁ」
この階段の先に何があるのか気になって登ってみることにした。
「お寺……?」
登った先にあったのは、古びたお寺…
「随分と年季が入ってる…」
古くからここに存在してる感じだけど、何というか全然手入れされていない感半端ない。言葉を悪くすれば廃寺と思われても仕方のない感じ…
「ねぇ、ねぇ」
お寺の様相に気を取られていると、誰かに着物を引っ張られた。
「え?」
振り向けば、小さな男の子。
「ねぇ、なにかちょうだい」
「?……何が欲しいの?」
「おなかすいた」
「あ、食べる物?ちょっと待ってね」
確かさっきもらった落雁があると思い袂に手を入れ取り出した。
「はい、どうぞ」
男の子に差し出すとパッとそれを取り走り去ってしまった。
「…お腹空いてたのかな…?」
呆気に取られていると、男の子が走り去った方から沢山の子供たちが出てきてあっという間に囲まれた。
(な、なにっ!?)
「ねぇ、ぼくにもちょうだい」
「私もほしい」
「ねぇねぇ、」
「おなかすいたよー」
年齢も性別も様々な子供たちは皆裸足で、顔も着物も煤汚れている。
(物乞い…?まさかこんな小さな子が…!?)
「ごめんね。あの一つしか持ってなくて」
子どもは神社の境内や茂みなどから出てきてどんどん増えて行く。
「わぁあん!」
鳴き声の方を見れば、先ほどあげた落雁を取り合いケンカが始まっていた。
「待って、喧嘩しないで」
声を上げても囲まれた子どもたちの要求の声が大きくて阻まれてしまう。
(どうしよう)
八方塞がりで困っていると…
「お前たちやめないか!」
信長様とはまた違う、低くて大きな声が境内に響いた。