第2章 無人島か戦国時代か
「おい三成本当か?」
秀吉さんが三成さんに確認する。
「はい。確かにそう申し上げました」
三成さんはやっぱり爽やかな笑顔を向けてそう言った。
「はぁ〜、またお前は余計な事を、間者かもしれない女にそんな約束したって意味ないって分からないわけ?」
猫っ毛さんはまたため息をついて三成さんを睨んだ。
「家康、三成を責めるな」
秀吉さんは、猫っ毛の人を家康と呼んで宥めた。そこから察するに、彼はきっと徳川家康なんだろうなと、頭が勝手に理解をした。
将来天下分け目の戦いを繰り広げる二人だけに、やはりこんな時期から仲が悪かったんだろうか?なんて、いらぬ心配をしてしまいヒヤヒヤしてしまう。
「肩を持つわけじゃないが、この女は刺客や間者にしては隙がありすぎる。馬にも初めて乗ったようだったしな」
隻眼のイケメン、伊達政宗さんが今度は口を開いた。
「政宗さんの馬に乗せられて何か出来る刺客なんていないでしょ」
またまた家康さん。
「まぁ、そうかもな」
ニヤリと、政宗さんは自信たっぷりに口角を上げた。
政宗さんの言う通り、この人は私を本能寺から連れて来た超本人。
見た目の甘いマスクに騙されて馬に乗ったが最後、周りの景色が見えないほどのスピードでここまで連れて来られた。生まれて初めての乗馬(しかも二人乗り)は今まで乗ったどんな絶叫系よりも恐ろしくて安全ベルトなんかもなくて、もう二度とあの人の馬に乗るのはやめようと誓った程に落馬しそうで怖かった。
「これがこの娘の手荷物だ。調べてみたが余計に分からなくなった」
今度は銀髪のイケメンが登場して、私の手元に唯一残った未来品であるバッグとその中身を皆の前に広げてみせた。
「っ、人のカバンの中を勝手に見るなんてっ!」
こんなのほんとに犯罪者扱いだっ!
「俺は明智光秀だ」
「あ、明智光秀っ!!?」
(ってあの本能寺の変を起こした人っ!?)
「ん?なんだ、俺の事を知っているのか?」
「っ、いえ…」
(もしかして、私に罪を被せようとしてるんじゃ…)
ここへ来て、鼓動は一番大きく嫌な音を立てて刻み出す。
「小娘、悪いがお前のこの持ち物について説明してもらいたい」
全然悪いと思っていないその顔からは、言わなければ分かっているな?と言う雰囲気が伺える。
自分の喉が、ゴクリと鳴った。